ABCマート、空前のスニーカーブームで疾走 「ニューバランス女子」が火付け役

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アディダスの「スタンスミス」などが今の売れ筋だ

スニーカーブームが継続している間にも、トレンドは徐々に変化。当初牽引したクラシックランニング系から、今はコート系と呼ばれる商品に人気が移りつつある。1980年代の白を基調にしたシンプルなデザインのものが多く、アディダスの定番である「スタンスミス」や「スーパースター」などが売れ筋だ。一時的なブームではなく、売れ筋を変えながら、市場が拡大していることが伺える。

もっとも海外の有名スニーカーが売れるほど、ABCマートの粗利率は下がる傾向にある。仕入れ値が高いためだ。同社が運営するPB(プライベートブランド)商品「VANS」や「ホーキンス」は、売上高が伸びても構成比が低下している。前期はPB商品比率が6.1ポイント減の40.4%となり、会社全体の粗利率は同0.6ポイント減の53.3%に落ちた。

実際、スニーカーなどスポーツ部門とキッズ部門以外のカテゴリーは、苦戦気味だ。特にレディース部門が前期比11.1%減と落ち込みが大きい。ハイヒールからスニーカーに履き替えた女性が多い結果でもあり、すぐに戻ってくるかは不透明である。

新潮流は6000円の「ぺたんこ靴」

ただ、ABCマートも、手をこまぬいているわけではない。今期はスニーカー以外のPB販売にも力を入れ、粗利率の向上を目指していく方針だ。「トレンドをつかんでいくことが大事だ。レディースの中でもスニーカーライクであったり、レザーでもスポーツウオーキングなどデザインの競争力を上げていく」と野口社長は言う。

たとえば、レディースではPB「ホーキンス」ブランドで、フラットシューズ「フラットライト」の販促を強化する方針。スエードやキャンパス素材などのぺたんこ靴で、リラックスできることが特徴だ。価格は6000円前後に抑えて幅広い年代の女性客を狙っており、スニーカーとは違うトレンドになりつつあるという。

新業態開発も進めている。4月にはスポーツとファッションをキーワードにした「エースシューズスタジオ」を、東京・碑文谷にオープンした。シューズとともにウエアもそろえ、ランニングやヨガ、フィットネスなどの需要を取り込む。野口社長は「東京五輪に向けてひとつのキーにしたい。今後スポーツ業態を成長分野にとらえたい」と意気込んでいる。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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