大前研一「国内メディアだけ見る人は危ない」

依然、国内シェアで一喜一憂する情けなさ

しかし国内で散々戦ってパッと世界に目を向けてみたら、世界シェアトップはベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブで約21%を占めています。次がSABミラーで約10%。この2社がM&Aで一緒になり、さらに巨大化しました。それで、日本企業はどこだろうと思って見ると、グラフの「その他」の中に入ってしまっています。

日本のビールメーカー各社の販売量は世界的に見るとかなり少なく、世界市場全体で見ると地ビールレベルと言ってもいいでしょう。ですから今から世界に打って出ようと思ってもまったく無理な話です。もはやそれだけの体力はない。彼らは、国内の過当競争に疲れ果て、世界化に失敗したのです。

次にパソコンの世界シェアを見ると、日本のメーカーはここでも「その他」です。東芝、富士通、VAIOを合わせてやっと4.2%です。

日経新聞が「東芝、富士通、VAIOが一緒になって日本のトップシェアNECを抜いた!」などと報じていましたが、世界を見たら「その他」。3つ足してもたった4%であり、はいご苦労様、という感じです。トップは中国のレノボ、次いでHP、デル、台湾のエイスース、アップルと、海外勢に大きく水をあけられています。

次に石油メジャーの売上高を見ると、ここでも日本企業のシェアは低いです。

日経新聞の紙面を何日も飾ったJXホールディングスと東燃ゼネラル、出光と昭和シェルの経営統合がありました。「日本はコスモだけが取り残され、完全に2強の時代に入った!」などと注目を浴びていましたが、世界を見れば完全にランク外ということです。

メディアを鵜呑みにすると世界が見えなくなる?

これが、国内競争を重視したあまり世界化に出遅れてしまった国内優良企業の末路です。かろうじて自動車会社やブリヂストン、JTなどは頑張っていますが、ほとんどの企業は国内競争で消耗し尽し、世界に出て行く力がないというのが実態です。

アサヒビールも、もっと早くから世界化を始めていればできたはずです。アサヒは1990年代、オーストラリアのビール大手フォスターズの株式をかなり保有していましたが、経営力に問題があり売却してしまいました。しかし、当時のアサヒビールの力を持ってすれば、アメリカのクアーズと合併したカナダの大手・モルソンあたりも買うことができたはずなのです。そういうチャンスを逃して国内で熾烈な競争を展開し、気がつけばもう世界の壁は厚すぎる、ということになってしまいました。

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