迷走するユニクロ、値上げ後に早くも値下げ 客足戻らず、大幅下方修正で減益の失態

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要因で最も大きいのが、国内ユニクロの不振である。2月までの既存店売上高は前年同期比1.9%減。中でも客数は6.3%減と厳しい。

これには暖冬という季節要因もあるが、2年連続で秋冬商品を値上げした影響で、客離れが進んだのは否めない。当時はアベノミクスによるデフレ脱却が叫ばれ、「急激な円安や原材料費高で品質を維持するには値上げが必要」(柳井社長)との判断だった。2014年秋冬物は一斉に新商品で平均5%値上げ。2015年秋冬物は新商品の約2割を平均10%値上げし、物によっては3割近く大幅値上げした。

だが結果として客数は2015年6月から12月まで7カ月連続マイナスを記録。柳井社長も不振の理由が値上げであることを認めた。

そのうえで柳井社長は「1990円、2990円といった、単純で買いやすい価格に戻したい。プライスリーダーは本来われわれだ。それを取り戻していく」と強調。実質値下げへ方針転換する。

弟分のGUは好調だが…

柳井社長も今期の業績を「不合格」と認めた(4月7日の中間決算説明会、撮影:風間仁一郎)

一方、ユニクロ失速を尻目に、これまでやられっぱなしだった競合は復活している。

「グローバルワーク」「ローリーズファーム」などを擁するアダストリアの場合、前期は6年前の過去最高益にほぼ並ぶV字回復に。福田三千男会長は「商品改革を進めたことで値引きすることなく、現場が自信を持って商品を薦めている」と語る。ジーンズカジュアルなど約500店を展開するライトオンは、中間期の既存店売上高が14%増と快走。「売りたいものを明確にした攻めの商品戦略が奏功した」(横内達治社長)。

しまむらは3期ぶりに営業増益へと復調。1000円値上げした高品質パンツが100万本を超える大ヒットとなった。野中正人社長は「ユニクロが厳しいのは昨年からベーシック一辺倒でなくなり、ワイドパンツなどトレンドが出てきたことがある。その中で値上げが目立ったのではないか」と分析する。

ユニクロの今後についてアナリストからは「価格を下げても回復は難しい。新しい商品を出していくことが必要」と厳しい見方が多い。好調な他社は単純な値下げをせず、顧客ニーズをとらえた素速い商品展開で、旬のトレンドをつかんでいる。同じ意味で、ユニクロの弟分である「ジーユー(GU)」に勢いがあるのとも、また対照的だ。

消費者の嗜好変化が速い今、図体が大きく、リードタイムが他社より長いユニクロは、不利な立場にある。今後は商品計画を一から見直し、ファッション性を高める方針だが、過去の成長路線に戻るには時間がかかりそうだ。

「週刊東洋経済」2016年4月23日号<18日発売>「核心リポート02」を転載)

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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