なぜいまだ健在?ビデオカメラ「起動音」の謎 フォーマルな席での「トラブル要因」なのに…

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フォーマルな席でビデオカメラ起動音は、もはやトラブルの元だ。この状況が続けば、やがてフォーマルな式典でのビデオカメラ撮影は禁止され、ますますビデオカメラの必要性は失われていくだろう。

すでに現在も、スマートフォンでの撮影は禁止する式典は存在する。今回の卒業式でもそのようにアナウンスされた。日本独自仕様である、シャッター音が消せないからだ。

では、この問題をどのように解消するか。マニュアルの最初に書いておくという解決法は、無駄である。なぜならば、多くの人はマニュアルなど読まずにすぐ使い始めるからだ。現在スマートフォンのような複雑な機器ですら、マニュアルが存在しない。使いながら覚えるのがデフォルトとなりつつある。そういうITリテラシーの中で、紙のマニュアル読んどけ、という対応は意味がない。

ビデオカメラ市場はもはや「風前の灯」

これはもう、各メーカーがデフォルトで音が鳴らない設定で出荷する以外にないだろう。どうしても起動音が必要だ、これがないとテンション上がらないという人のみ、設定変更で起動音を出すようにすれば良い。

とはいえ、おそらくもうそのような方法を取っても遅い。なぜならば、動画の記録はもはやスマートフォンやデジカメで行うものになっており、ビデオカメラ市場というのは風前の灯だからだ。数年前なら子供の誕生や入園・入学のタイミングでビデオカメラを購入したものだろが、もはやそのような習慣は失われつつある。

つまり、新モデルでいくら無音にしても、フォーマルな式典でポリプロピレ~ンピレンピレンが響き渡る現象というのは、今消費者の手元にあるビデオカメラが朽ち果てるまでなくならないということである。これから中学、高校の卒業式でもずっとイライラさせられるというのは、ビデオカメラ業界に長年かかわってきたものとして、やりきれない思いである。

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小寺 信良 映像技術者、コラムニスト

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こでらのぶよし / Nobuyoshi Kodera

コラムニスト/映像技術者/インターネットユーザー協会代表理事。1963年宮崎県出身。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、ライターとして独立。AV機器から放送機器、メディア論、子供とITの関係まで幅広く執筆活動を行う。主な著書に「Ustreamがメディアを変える」(ちくま新書)、「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)など。WEBではAV Watch、ITmedia、価格.com にてコラムを好評連載中。夜間飛行より毎週金曜、メールマガジン「金曜ランチボックス」を発行中。

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