弱肉強食時代に勝つ「戦友型夫婦」の潜在力 「ハウス・オブ・カード」の2人が示唆するもの

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『ハウス・オブ・カード』も、それらの列に並ぶものという予感がある。しかしながら、同時代を生きる我々には、なかなかそこにちりばめられたこの時代を読み解くためのヒントが解読しにくい。

それでも、これは非常に重要なことだと思ったので、数十年後の世界から見ているつもりになって、それを読み解くことに挑戦してみたい。

一度は「協力する必要がなくなった」夫婦だが…

まず注目させられたのが、夫婦の描き方である。『ハウス・オブ・カード』の主人公夫婦において重要なのは、二人が「戦うために協力し合う同志」ということだ。戦友なのである。

これは、古くて新しい「夫婦の形」だと思った。かつて、夫婦は協力し合う同志である場合が多かった。なぜなら、そうでないと物質的に貧しい世の中を生き延びられなかったからだ。

しかし、20世紀に入って物質的に豊かな社会が築かれたとき、夫婦は必ずも戦うために協力し合う必要がなくなった。そうしなくても生きていけるようになったからだ。それで、夫婦の関係は大きく変わった。今では、「戦うために協力し合う同志」という関係はめっきりと減った。

しかしながら、この二人はあえて現代にそういう関係を結んだ。なぜかといえば、そうしないと勝てないからだ。なぜ勝つ必要があるかといえば、それは現代が競争社会だからである。

現代において、人々は否応なく競争を宿命づけられている。それは、たった20年前の20世紀とは大きな違いだ。その中で気持ち良く生きていこうとしたら、勝つしかない。

この映像作品の見た人の中には、「なぜこの夫婦はこんなに戦っているのだろう? もう富も名声も十分手に入れたのだから、戦う必要がないではないか?」と思う人もいるだろう。

しかしながら、それは旧時代的な考え方であり、厳しい言い方をすれば「呑気」だ。きっと、まだ前世紀の既得権益の上にあぐらをかいているから、そういうのどかな考え方ができるのだ。やがて、そうのんびりとはかまえてはいられなくなるはずである。

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