中国人は「何もない田舎」を心底求めている 観光の目玉がないと嘆く日本人に伝えたい

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山舎酒店の外観

私自身も、この機会に杭州の別のプチホテルに宿泊してみた。もう少し町中に近く、もう少しリーズナブルな「山舎酒店」だ。

客室は約10室。価格は1室600~800元ほど(約1万円~約1万4000円)。日本でいえば、軽井沢などにある瀟洒(しょうしゃ)なペンションのような雰囲気で一戸建て。1Fは宿泊者以外も利用できるおしゃれなカフェ兼宿泊者の朝食の場となっている。

騒ぐ人は皆無

 山舎酒店の朝食

1Fの離れと2Fが客室で、私が宿泊した1Fの部屋はウッディな内装と温かみのある家具で、落ち着いた雰囲気だった。テレビはなく、窓からは山の風景が見渡せて、思わず深呼吸したくなるような居心地のよい空間だった。

私が泊まったのは平日だったが、客室はほぼ満席。朝食を出すカフェに来た人々の様子を見ると、泊っているのは20代の女性同士のグループや30~40代のカップル、50代の子ども連れなどで、ほとんどが上海などからマイカーでやってきていたエリート風の人々だった。

カフェで騒ぐ人などはもちろん一人もなく、ゆったりと、長い時間をかけて朝食を楽しんでいた(朝食時間は朝8時半からと遅めで、早朝出発するような観光目当ての観光客は1組もいなかった)。

虚谷設計酒店の客室

このほか、東信和創園という手作りショップやカフェなどが立ち並ぶエリア内にある、1960年代の工場跡地を改装した「虚谷設計酒店」など、これまで中国にはなかったタイプのデザイン性が高いホテルも、続々とオープンしている。

このように、中国では都市部の若手エリート層、富裕層を中心に、癒しを求める旅がじわじわと広がっている。この流れは今後、それ以外の中間層や若年層にも広がっていくことが予想される。

日本人が想像する以上に、中国人の“旅行の成熟化”は加速度的に進化しているのだ。

中島 恵 ジャーナリスト

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なかじま けい / Kei Nakajima

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、フリ―に。著書に『なぜ中国人は財布を持たないのか』『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(すべて日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『「爆買い後」、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)などがある。

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