中国人は「何もない田舎」を心底求めている 観光の目玉がないと嘆く日本人に伝えたい

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そのうえ、宿泊者にはオプションで農村体験プログラムを提供しているのが特徴だ。客室は15室で約30人宿泊可能。客のほとんどは上海など周辺からやってきた人々。欧米人の客もたまにいるが、ホテルの紹介や予約は中国人が多く利用する微博(中国版ツイッター)や中国の旅行サイトのみしかなく、ホームページを開設してないため、日本人客はほぼゼロだそうだ。

「野菜を植えたり、収穫したりすること。周辺を散策したり、釣りをしたり、ハイキングをしたりすること、などに人気がありますね。都会の中国人はそういう経験すらしたことがないですから。近所の畑で作った野菜や生みたての卵を使った家庭料理も好評です。また、近所にある図書館で本を借りて、部屋で静かに本を読む人もいますね」

「私はホテルでのこういう楽しみ方を“体験経済”と呼んでいるのですが、中国人にとって未体験のことはまだたくさんある。そういうところに着目していけば、彼らの心を惹きつけることができるのではないか、と考えています」(慎さん)

中国の都会人にとって、農村は当たり前ではない

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この話を聞いていて、私は合点がいった。私は日本でよく「中国人は日本の農村の風景に憧れているんです」というが、多くの日本人からは「えっ、どうして? 中国には農村部が多く、彼らにとって田舎の風景や雄大な自然なんて、見慣れたものでしょう?」と反論されるのだ。

だが、冷静に考えてみてほしい。広大な中国の沿海部に住む中国人にとって、内陸の農村に行くには飛行機でも数時間かかるほど遠く、畑や田んぼは身近なものではない。

逆に日本に行くほうが距離的に近いくらいだし、日本では東京から1時間も電車に乗れば、すぐに畑や田んぼを目にすることができる。日本は小さくコンパクトに都会と田舎が混在しているうえ、そもそも日本と中国の風景は、同じ田舎といってもまったく異なる。日本と同じスケールや感覚で中国という国を捉えようとすると、中国人の心情はなかなか理解できない。

日々都会の仕事に追われる中国人ビジネスマンにとって、自国内に、しかも上海近郊という比較的行きやすい場所にこうした自然豊かなプチホテルがあれば、ぜひ行ってみたいと思うのは当然のことだろう。前述の男性が言っていたように、子どもにとっても自然に触れることはよいことだろう。中国では子どもも長時間の勉強を強いられ、子どもが感じているプレッシャーは日本の比ではない。

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