フランスのレストランは日本とまったく違う 「劇場気分」を味わえるのが最大の魅力

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前菜、メインと料理を堪能しつつも、気が抜けない。日本では、食事の途中にウェイターが客席にやって来て、客が食事を楽しんでいるかどうか尋ねたりすることは滅多にない。ところが、フランスではウェイターがやって来て、「すべてうまくいっていますか」などと、声をかけてくる。笑顔を作り、少なくとも「おいしいです」などと返答せねばならない。

フランスではメインの肉や魚の量が、日本に比べて多い。1人前600グラムのステーキなどというメニューもあるくらいだ。そこまで多くはなくても、フランス人は年配の女性でも大ぶりなステーキを残さず食べる。メインの途中で苦しくなってしまう私は、どうしてそんなことが可能なのか、不思議だった。周囲の様子を見ていると、フランス人はレストランであまりバゲットを食べない。せいぜい、2切れぐらいまでにとどめている。

バゲットは無料でお代わりもできるので、たくさん食べてしまいがちだ。フランス人のまねをしてバゲットの量を減らすと、私も無理なくメインを味わえるようになった。

メインが終わると、ウェイターは、チーズかデザートの注文を取りに来る。フランス料理は基本的に砂糖を使わないので、デザートが発達したという。日本では、甘い物好きは女性が多いというイメージがあるが、フランス人は男性も甘い物をよく食べる。スーツ姿の立派な紳士が、うれしそうに果物のタルトなどを食べている様子は、ほほ笑ましい。

レストランならではの醍醐味がある

デザートの後には、コーヒー、ハーブティーなどを頼む。レストランには客を回転させようという発想があまりなく、客は食後の飲み物を味わいながら、好きなだけ食事の余韻を楽しむことができる。テーブルで勘定を済ませて終わりだ。前菜からコーヒー、勘定まで全行程を完了するのに、2時間くらいかかる。フランスではよくあることだが、ウェイターがなかなか注文を取りにこなかったり、料理が出てくるのが遅かったりすれば、もっと時間がかかる。

レストランでの食事代には、サービス料が含まれるし付加価値税も付く。お金もかかるし、時間もかかるというわけで、フランス人はそう頻繁に外食しない。親しい間柄では、自宅に招いて会食する習慣があるという理由もある。

しかし、フランスのレストランには、レストランならではの醍醐味がある。ウェイターは、プロとしての誇りを持って堂々としている。客を楽しませようと冗談を言ったりもする。長いレストランでの滞在時間、客も同席者やウェイターとの会話を楽しむ一方、ほかのテーブルの客の様子をそれとなく眺めたりもできる。誰もが「観られる」ことを意識している。会話を弾ませ、料理を味わう以外に、「観る」「観られる」楽しみがあるのだ。

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