炭素繊維に積極投資する東レの強みと弱み
強度は鉄の10倍、重さは4分の1--。
”夢の素材”として航空機や自動車などへの採用拡大が期待される炭素繊維。世界トップの東レが首位固めに動く。世界4極での積極的な設備投資などにより、炭素繊維複合材料事業を2020年に売上高3000億円、営業利益600億円と、前12年3月期比で売上高4.4倍、営業利益7.7倍にまで引き上げる計画だ。
東レは15年までに日本、米国、フランス、韓国の4地域で炭素繊維の生産体制を増強する。日本では航空機向けなどの高付加価値品の生産拡大を狙い特品炭素繊維設備を増設。米国と韓国では産業用炭素繊維設備をそれぞれ増設、拠点新設するほか、フランスでも炭素繊維の1次加工工程のラインを新設し生産体制を強化する。15年までに4地域の増強、新設は完了し、現在の生産能力の1.5倍の2万7100トンの生産量になる見通しだ。
生産品種として注力するのは航空機向けだ。航空機用途は高い品質と精度の高い成形が求められる分、単価も高い。11年に就航したボーイング社の最新航空機「B787」(=タイトル横写真=)では、機体総重量の約50%に及ぶ約35トンの炭素繊維が使用されるなど、需要は拡大している(前機体「B777」は約10トン)。エアバス社の機体も含め、今後も航空機用炭素繊維の使用量は増えそうだ。
また産業用途も、風車のブレード(羽根)や、低公害車の燃料となる天然ガスや水素を貯蔵する車載用ボンベ、圧力容器などの需要が、欧米中心に高まっている。米国、韓国で産業用炭素繊維設備を増強し安定的な供給量を維持することで、需要の取り込みを狙う。