あえてキューバに残る若い起業家たちの思惑 米国への移民は過去最大規模だが

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最近フロリダ州タンパに移り住んだ元ガラス職人の男性は、キューバでは商売を始めても、材料を手に入れることが容易ではないと語る。靴職人は革が手に入らず、「投資を取り返せずにいる」と彼は言う。

起業資金は米国からの仕送り

ニューヨークに来るまで獣医だったという男性(44)は、卸売問屋が足りず仕入れができないことが、なかなか利益が出ない理由だと述べた。「(キューバで認められている)自営業というのは、政府が国連で『キューバ国民は自ら中小企業を経営しています』と言うために、あらゆるものを覆い隠すハンカチみたいなものだ」と彼は言う。

「初めは私たちはほとんどみんな革命家だった」と彼は言う。「だがもうみんなやめてしまった。フィデル(・カストロ前国家評議会議長)のことも、革命も、社会主義も何もかも信じてはいないからだ」

キューバ政府が経済改革を前進させ、米国が通商や渡航の制限を緩める中で、出国するキューバ人が減って国に残る人が増えることをオバマ政権は明らかに期待している。

だが出国した人々はキューバに恩恵をもたらしてもいる。米国からの送金を元手に起業したというケースは少なくない。冒頭のカマチョは、自分たちの菓子店のようなビジネスを始めるのにかかる費用は2万5000ドル程度だと語った。彼らは幸いなことに米国籍を持つ親族の援助を受けることができた。

ローズ米大統領副補佐官は先ごろ、「キューバにおける経済活動の活性化は、キューバの人々にとって恵みとなるだろう。彼らの力の源となり、生活改善にもつながるだろう」と述べた。

だがキューバのロドリゲス外相は「国民の力の源になる」といった表現を一蹴し、大量移民は米政府のせいだと述べた。多くのキューバ人は移民が殺到している理由について、関係正常化のあかつきには米政府が亡命キューバ人に対する優遇措置 をやめるのではという懸念があるからだと述べている。

そうした米国の制度は「選択的で政治的動機に基づくもので、違法で危険で無秩序な移民を奨励している」とロドリゲス外相は先ごろ、記者会見で述べた。

(執筆:Frances Robles記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2016 New York Times News Service

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