あえてキューバに残る若い起業家たちの思惑 米国への移民は過去最大規模だが
昨今の米国への移民の増加を見ていると、キューバの人々が経済改革にどれほど信頼を寄せているのか疑わしく思えてくる。中継地となっているコスタリカは先ごろ、数十カ所の収容施設で足止めされていた数多くのキューバ人移民を国境の北へと移送したが、すぐに南のパナマ国境に新たな移民が1000人も現れた。
国民のライフスタイルに変化も
「今キューバで国勢調査を行ったら、いったい何人残っていることやら」と言うのは、経営していた美容院をたたんで米国に来たジェニー・エレディア(33)だ。途中、エレディアは何カ月もコスタリカ で足止めされた。あちこちの収容施設を行ったり来たりしたが、多くのキューバ人が同じ目に遭っていたという。
米政府の統計によれば、昨年、米国に移り住んだキューバ人の数は少なくとも6万3000人に上る。その大半が南西国境から陸路で米国入りしたという。永住権を得たキューバ人の数はオバマ大統領の就任後だけで25万人を超える。フロリダ州オーランドの人口に匹敵する数字だ。
2014年、すでに米国にいる親族と一緒に暮らすためにビザを申請したキューバ人は12万2000人に上った。米国へのビザの申請数としては世界トップクラスだ。
「キューバ経済の低迷が続くなら、多くのキューバ人が国を去るだろう」と語るのは、キューバの経済改革をテーマにした『オープン・フォー・ビジネス』の著者リチャード・ファインバーグだ。
だが、たとえ祖国に見切りをつけるキューバ人が何万人もいたとしても、国に残ることを選ぶキューバ人のほうがはるかに多い。
「5万人とか7万5000人とかが国を出たとしても、1120万人はまだ残っている計算だ」とファインバーグは言う。彼は著書で、キューバに残ることを選択した若い世代に1章を割いている。
個人営業を認める新たなルールのもと、キューバ政府は昨年、約49万6000件の自営業の開業を認可した。そのうち3分の1近くは若い世代が経営者だ。
「(海外)旅行ができるようになったり、海外に出てもキューバに戻れるようになって、ここの生活は変わった。ライフスタイルや着る服も」と語るのは27歳のエミスレイディ・マサだ。彼女は恋人の経営する食事の宅配業などいろいろな仕事を掛け持ちしている。「どこか変わってきた感じがする」