パナマ文書を読み解く集団「ICIJ」とは何者か 調査に長けたジャーナリスト団体の素顔

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南ドイツ新聞のバスチアン・オベルマイヤー記者(同氏のツイッターのサイトより)

ICIJがタックスヘイブンについてのメガリークを行うのは、パナマ文書が初めてではない。2013年にはリーク情報を元に各国の政府高官や富裕層がオフショア口座を使っていかに不当に利益を得ているかを暴露し、2015年には英金融大手HSBCのスイスのプライベート・バンキング部門が富裕層の巨額脱税をほう助していた事件(「スイスリーク」)を世界に広めた。

スイスリークではHSBCの元社員が顧客データを含んだファイルを盗み、フランスの税務当局に提出。ICIJは仏ルモンド紙を通じてこのファイルを入手し、2月8日、ネットで内容を掲載した。ほう助疑惑の詳細が世界中に伝わった。

パナマ文書については、2014年、南ドイツ新聞のバスチアン・オベルマイヤー記者がある情報源から暗号化されたチャットを通じて機密文書の存在を知らされた。

プロジェクトにかかわった記者は約400人

情報が洩れない方法で文書の一部を受け取った南ドイツ新聞はICIJに連絡をとった。巨大な量のリーク情報をとても1社ではカバーできないと感じたのだろう。

その後、ICIJ内のテクノロジースタッフがリーク文書を検索するサーチエンジン、世界の報道機関がアクセスできるURL、記者たちがリアルタイムでチャットできる仕組みを作った。プロジェクトにかかわった記者は約400人。世界76か国の100以上のメディア組織が協力した。

「メガリーク」というと、2010年、内部告発サイト「ウィキリークス」が手掛けた、イラクやアフガニスタン戦争にかかわる米軍の機密情報や米外交文書を公開した一件が思い出される。

ウィキリークスの場合は英ガーディアン、米ニューヨーク・タイムズ紙などの大手報道機関が協力しながら生情報を分析し、それぞれの記事を一斉に公開したが、ウィキリークス自体もウェブサイトで元の情報を公開した。

ICIJのディレクター、ライル氏によると、プロジェクトに参加した報道機関は生の文書を入手したわけだが、ウィキリークスのように「そのままこれを公表する予定はない」という(サイト「ワイヤード」、4月4日付)。違法行為を行っていない個人の情報が外に出てしまう可能性があるからだ。プロジェクトの焦点は公的な人物による違法行為の暴露である。「私たちはウィキリークスではない。ジャーナリズムには責任が伴う」(ライル氏)。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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