ドイツでも蔓延する「トランプ現象」の正体 貧富の格差が、国家を分裂へと導いている
フラッシャー所長によると、堅固な経済指標やワーキングプアへの政府移転支出がひどい状況を覆い隠している。ドイツの政治家層は教育やインフラに投資するより、社会福祉に100億ユーロ追加で支出することで格差を取り繕うことを選んでいると彼は話した。「だいぶ前から私たちはカーストではないとしても、階級のある社会になってしまった」。
ドイツの社会経済の両極化は政治的表現を見付けつつある。難民危機がドイツを襲う丸1年前の2014年秋、自身を「PEGIDA」、つまり「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」(Patriotic Europeans Against the Islamization of the Occident) と呼ぶ団体が、東部の都市ドレスデンで集会を開くようになった。
AfDがドイツ東部3州の議会で議席を獲得
抗議運動は拡大し続け、その矛先はメルケル首相が率いる政府や「嘘つきのマスコミ」、ヨーロッパに避難して機会を求める外国人へと向けられた。
ギリシャ債務危機の最中に設立されたEU懐疑派の政党「ドイツのための選択肢」(Alternative for Germany、AfD) は、PEGIDAが発する不満の声に乗じてその目的を改め、移民に対する排斥感情を背景に体制と戦うことにした。2014年には、その新興政党はドイツ東部の3つの州議会で議席を獲得した。先月の地方選以来、AfDは国の半分の州議会で選出され、来年の国民投票ではドイツ連邦議会で議席の獲得を目指している。
「ドイツの政治的相互作用を支配する慣習は驚異的な速度で変化している」と「デア・シュピーゲル」誌のDirk Kurbjuweit副編集長は最近のエッセーで書いている。中道右派のドイツキリスト教民主同盟と中道左派のドイツ社会民主党の二党体制は脅かされている。
同誌の世論調査によると、ドイツ人の57%が「上層部は結局好きなようにやるのであって、私の意見は考慮されない」という意見に同意している。AfDの支持者では88%が同意した。AfDはFacebook上で25万5000件以上の「いいね」を獲得しており、フォロワー数はドイツキリスト教民主同盟とドイツ社会民主党の合計数を上回っている。従来のメディアでは自分の意見が無視されていると感じている人々にとって、Facebookは人気の公開討論の場になっている。