鉄道マンを育てた「幻の絵本」がついに復刊! 乗り物絵本の第一人者が描いた「山手線一周」

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多くの子どもたちに愛されてきた山本忠敬さんの乗り物絵本。『でんしゃがはしる』(中央)と『とっきゅうでんしゃ あつまれ』(右)、『しゅっぱつ しんこう!』(いずれも山本忠敬作、福音館書店)

ジープを改造した小さな消防自動車が活躍する『しょうぼうじどうしゃ じぷた』、特急電車から急行、そしてローカル線へと乗り継ぐ旅を描いた『しゅっぱつ しんこう!』・・・・・・。乗り物をテーマとした数多くの絵本を手がけ、「乗り物絵本の第一人者」といわれた故・山本忠敬(やまもと・ただよし)さん(1916~2003)の作品だ。

だが、山本さんの作品のうち、名作と称えられつつも長らく再刊されず「幻の作品」となっていた絵本がある。いまから38年前、1978(昭和53)年に刊行された『でんしゃがはしる』だ。山手線の電車が都心を一周する様子を描いたこの絵本が、山本さんの生誕100周年となる今年の2月、ついに復刊された。

その復刊を支えたのは、絵本に情熱を持つ編集者はもちろんのこと、幼少期に『でんしゃがはしる』をはじめとする山本さんの絵本を読んで鉄道に憧れ、そして夢を叶えた現役の鉄道関係者たちだった。

黄緑の山手線が東京を一周

『でんしゃがはしる』は、品川駅を出発した山手線の外回り電車がさまざまな電車とすれ違ったり並んで走ったりしながら、品川駅まで一周する様子を描いている。山手線の電車は、当時の「顔」だった黄緑色一色の103系電車。途中で出会うのは、今では見られなくなった茶色い旧型の電気機関車が引っ張る貨物列車や水色の京浜東北線、クリーム色と赤の塗り分けの特急電車といった国鉄時代の列車や、ターミナル駅で接続する私鉄・地下鉄各線の電車などだ。

鉄道をはじめとする乗り物が大好きだったという山本さんならではの、大人の鉄道ファンも魅了される再現度と躍動感にあふれた絵、各駅で接続する路線やすれ違う列車を淡々とつづるシンプルな文章、そしてページの下に入った路線図でつづられる山手線一周の旅は、まさに昭和50年代、黄緑色の電車が走っていた時代の東京を走る電車のドキュメントといえる。

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