トランプ候補が作りあげた「日本問題」の憂鬱 グレン・S・フクシマが米大統領選を読む
第1に、彼は日本が「われわれの雇用を盗み取っている」と非難している。そして、大統領に選ばれた暁には「日本から雇用を取り返しにかかる」と約束している。
彼は国家間の勝ち負けを引き合いに出し、日本などの国々は勝っていて、アメリカは負けているのだと主張する。トランプは2015年6月16日に自身の立候補を発表した際にこう語った。「われわれがかつて日本を何かで打ち負かしたことがあったか?」「彼らは自国の車を数百万台以上送り込んできているが、われわれはこれを何とかしなければならない。東京で最後にシボレーを見たのはいつの話だ?皆さん、東京にはシボレーはもはや存在しない。彼らはいつもわれわれを打ち負かしている」。
この後も彼はCNNに対して以下のように語った。「私は中国、メキシコ、日本、ベトナム、そしてインドから雇用を取り返すつもりだ。これら全てはわれわれから雇用を奪っている国だ。私は雇用を奪還する」。
トランプはTPPを「有害」と考えている
第2に、彼は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの貿易協定が米国に有害だとして反対している。2月28日のアラバマ州マディソンでのスピーチでトランプは、日本の安倍晋三首相を「本当に頭が切れる」と評した上で、「安倍首相にずっと酒と料理でもてなされてきた」キャロライン・ケネディ駐日米国大使が「彼ら(日本)がしたいように何でもするだろう。何でもいいなりだ」と述べ、オバマ政権の対日交渉スタンスを批判した。トランプ氏は次に、米国政府が(彼いわく)「破滅的な通商協定」を結んで「米国の労働者から仕事を奪い、われわれをさらに貧しくする」と非難した。
第3に、トランプは日本が為替操作国だと非難している。彼はしばしば、実質的に品質が優れているキャタピラー製の重機ではなくコマツ製の重機を買うよう強いられたという、知人の米国人会社役員の事例を引き合いに出している。キャタピラー製のような米国製品より品質的に劣っているにも関わらず、「そのような安い製品を買わない理由を役員が株主に対して全く正当化できないほど、日本が円を安く操作している」、というのがトランプの言い分だ。
最後に、トランプは日米安保条約が不公平だと主張している。「もし日本が攻撃されたら、われわれはすぐに駆けつけて第3次世界大戦を始める義務があるが、われわれが攻撃を受けても、日本にわれわれを助ける義務はない。どう見ても公平ではない。これで良いのか?」。トランプはその詳細を、3月26日の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで次のように説明している。
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