トランプ候補が作りあげた「日本問題」の憂鬱

グレン・S・フクシマが米大統領選を読む

「いつまでもわれわれは世界の警察官ではいられない。だが残念なことに、この世界には核が蔓延している。核保有国にはパキスタンが含まれ、おそらく北朝鮮も核を持っている。と言っても、まだ(米国には)届きはしない。しかしおそらく周知の通り、また私から見て、これは大きな問題だ。そして、もし北朝鮮が核を持っているのなら、隣接している日本にも核を持ってもらった方が良くないか?」

「言い換えると、日本が北朝鮮に対して自衛措置を取れば良いのに、(それをしていないこと)こそが本当の問題なのだ。そこにこそ私の主張が正しい理由がある。米国はこれまで明らかに、北朝鮮などに対しても十分な対処ができていない。私の主張が正しい理由はそこにある。ご存知のとおり、対日関係に絡む実情の1つは。。。。」

「ところで話は変わるが、私は日本が大好きだ。あそこにはとても多くの友人がいる。日本とビジネスもしている。しかし、もしわれわれが攻撃を受けても、日本は何もする義務はない、そのことなのだ。もし彼らが攻撃を受けたら、われわれは全力をもって出陣しなければならない。ご理解いただけただろう。その点が極めて一方的な条約なのだ。つまり、もしわれわれが攻撃を受けても彼らには防衛に駆けつける義務がないのに、もし彼らが攻撃を受けたらわれわれは総力を挙げて彼らの防衛に向かわねばならない。この点こそ本当の問題なのだ」

もし7月の共和党大会でトランプが共和党の指名を獲得する、あるいは、その座を手に入れられなかったとしても第3党の候補として立候補した場合、11月8日の選挙までの期間、街頭演説や全国放送のテレビ討論で、米国の対日政策に対する彼の批判が続けられる可能性は高い。

そして彼と争っている候補も、その主張に対して、何らかの反応やコメントを強いられることになる。トランプが日本について触れるのは、日本を批判するというより、対日交渉を行う米政府当局、民主党、共和党を攻撃する材料として使っている面が色濃い。

「日本人は米国の役人の無能さを利用している」

トランプはよく「私は日本人を非難しているわけではない。彼らは良い人たちで、私には日本人の友人がたくさんいる。とはいえ彼らは本当に賢くて、われわれの役人の無能さを利用している。私はそれを変えようというのだ。私は頭の切れるビジネスマンをたくさん知っている。その1人のカール・アイカーン氏は彼らとの交渉の仕方を心得ているし、米国が取引に勝つ方法も知っている」と説いている。

ロナルド・レーガン元大統領がウォルター・モンデールを破って再選された1984年の大統領選挙から一貫して、日本の指導者(自民党、官僚、経済界)は民主党よりも共和党が米大統領選に勝つのを望む傾向がある。これには多くの要因があるが、そのうち3点をあげるとすると以下の点だ。

日本では、(1)共和党は自由貿易主義者であり、民主党は保護貿易論者との固定観念と(2)共和党は中国に対して厳しく、民主党は甘いとの見方がある。それに加えて(3)共和党の政府高官は退官後、日本とのビジネスを希望する人が多いため、日本側も歓迎する傾向がある。

しかし今の共和党は、8年前と比べても、根本的に変わりつつある。日本は、継続性、安定性、予測可能性を好む傾向があるので、今年の選挙では、ここ数十年で初めて、日本の指導者層でも、民主党の継続性のあるヒラリー・クリントンを、共和党の予測不可能なドナルド・トランプより好む人が多くなるかもしれない。ともあれ、トランプは3月21日の米紙ワシントン・ポストのインタビューで次のように述べている。

「私は、常にわれわれ(アメリカ)は予測不可能であるべきだと言っている。しかしいつも予想通りなのがわれわれだ。そして予想通りなのは悪いことなのだ」

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