NGNは組織問題でなく次世代サービスの布石だ−−三浦 惺 日本電信電話(NTT)社長
-- NGNがスタートしたが、めぼしいサービスに欠ける。いったい社会の何が変わるのか?
われわれのサービスは音声からデータや映像にシフトしているが、NGNを使うことでその流れが加速する。地域的にもスモールスタートだが、夏から秋にかけて拡大する。NGNならではのものとしてQoS(通信品質確保)や企業向けSaaS(サービス型ソフトウエア)が挙げられる。USEN、シスコシステムズ、ソニー、NEC、日立製作所といった企業もサービス開発に取り組んでいる。
-- 目玉と期待される地上デジタル放送IP再送信サービスがスタートに間に合わなかった。
一部の放送事業者からの同意は得ているが、得ていないところもある。全体がそろってからスタートしたい。そう遠くない時期と考えている。
-- 総務省は、NTT東西が他社に貸し出す光接続料の再値下げを要求している一方で、投資コストと接続料収入が乖離した場合の事後精算の仕組みも一部認めている。この点は?
投資コストの回収の仕組みはぜひお願いしたいと申し上げてきたところで、主張が認められたと考えている。接続料については、過去の数値をベースとした需要予測で考えていたが、総務省はもっと積極的な需要予測を考えていらっしゃる。それを踏まえて細部を詰めていきたい。
-- 電話網、IP網、NGNと三つのネットワークが併存することになるが、NGNにどう移行していくのか?
NGNをスタートしている地域では、新規加入はNGNに収容する。既存IP網からNGNへの移行コストを安くしたり、円滑にするための技術開発も行っている。電話網をどうするかは2010年までには明らかにする。英BTはコスト削減のためにNGNに取り組んでいるが、いずれにせよ、ネットワークが複数あって、サービスが多くあるのはコストの面からも望ましいものではない。
-- 10年度にNTTの組織のあり方が再検討される。NGNはグループの一体化に向けた仕掛けとの批判については?
最初から組織問題ありきではいい議論にならない。われわれとしては、サービスの流れや技術の変化を的確にとらえたい。今までのままでやっていけるのか、いけないのか。問題がどこにあるのかを検討し、それらの結果として、組織がどうあるべきかを考えるべきだ。
NGNで一体化うんぬんとの話だが、通信と放送、携帯と固定の融合が進んでいく中で、お客様の要望はできるだけワンストップで対応してほしいというもの。われわれは公正競争の考え方にのっとって、その枠内でサービス向上に努めていく。
(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
みうら・さとし
1944年生まれ。67年東大法学部卒業後、日本電信電話公社入社。NTT東日本社長、NTT副社長を経て2007年6月、社長に就任。和田紀夫前社長と同じく労務畑出身。
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