スズキ「イグニス」乗ってわかった本当の実力 このコンパクトカーは侮れない

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4WD(4輪駆動)の設定もある。ただ4WD化するだけでなく、下り坂でブレーキ操作なしに一定速度で走れる「ヒルディセントコントロール」や雪道やぬかるみなどの滑りやすい路面での発進をサポートする「グリップコントロール」が標準装備されるほか、2WD車では運転席のみのシートヒーターが、4WD車では助手席にも装備されるなど、使われ方に配慮した差別化も図られている。

安全装備については、2つのカメラによって歩行者やクルマ、車線の左右の区画線も認識して、警報や自動ブレーキで衝突被害を軽減する「デュアルカメラブレーキサポート」が設定されている。ダイハツがレーダー+カメラを採用しているのに対し、スズキはステレオカメラ方式なのが特徴だ。

直接的にキャラのかぶる車種が存在しない

やや高く感じられるが、中身の濃さを考えると納得

3グレード展開で、車両本体価格は138万2400~177万8760円。この価格帯は、ほかのAセグ車に対してはやや高く感じられるものの、中身の濃さを考えると十分に納得できるものだ。

競合車としては、前で挙げたAセグメント車よりも、価格的にはBセグメントの廉価グレードが相手となりそうだが、直接的にキャラのかぶる車種が存在しないので、むしろスズキ自身の「ハスラー」やダイハツ「キャストアクティバ」など軽自動車で高価格帯の車種になると思われる。小さいクルマが欲しくても軽自動車にはどうしても抵抗を感じるようなユーザーにとって、有力な選択肢の1つになるだろう。

一方のBセグ車に対しては、何を相手にするかで見方も変わってくるが、総じて言えるのはコストパフォーマンスの高さだ。走りに関しては、前で述べたとおりそつなく仕上がっているし、全体の質感やユーティリティに関しては、一般的なBセグ車に比べて遜色ないレベルにある。ただし、この内外装デザインについては、これこそイグニスの個性であり、選ぶ醍醐味があるものの、抵抗を感じる年配者も少なくないはず。それは好みの分かれるところだろう。

グローバルに展開することも念頭に開発されている

もともと「イグニス」は初代「スイフト」の欧州名だった。この車名が日本向けには初めて投入されることになり、スイフトとは別のグローバルカーとして再出発するはこびとなった。

ちなみに、今から約1年前、2015年春のジュネーブショーでイグニスの原型となる「iM-4」が披露されており、欧州での反響も大きかったという。イグニスはまず日本で生産されるが、グローバルに展開することも念頭に開発されており、今後は世界各地で生産することも大いに考えられる。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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