青息吐息の“出版旧体制”、デジタル時代の覇権は誰の手に?《アマゾンの正体》
アマゾンの提案は新興出版社の桃源郷
今、日本の出版業界は“非常事態”ともいえる、厳しい環境に置かれている(下図参照)。1996年の2兆6563億円をピークに市場はズルズルと縮小が続き、08年は2兆0177億円にまで落ち込んだ。もはや2兆円割れは必至だ。
その中にあって、出版点数は書籍、雑誌とも高止まり。書店の店頭で売れないまま出版社へ戻される返品率はジワジワと上昇している。出版社は疲弊しており、少しでも効率的に売り上げを伸ばしたい。月間1500万人以上の訪問客を集めるアマゾンが持つ“売る力”は極めて魅力的だ。
すでに、アマゾンは取次を中心に据えた鉄壁の出版流通システムに風穴をあけることに成功している。06年6月に始めた新しい取引モデル「e託販売サービス」だ。e託は新興出版社にとっての「桃源郷」だ。出版社は定価の60%でアマゾンに納品する必要があるため、標準的な取次への卸値(70%)よりも掛け目は悪い。が、新興出版社は取次の卸値が60%台。しかも、「支払い条件が半年後だったり手形払いだったりするため、手形割引の手数料を考えると60%でも十分に魅力的だ」(アマゾンジャパンの渡部一文バイスプレジデント)。
アマゾンの需要予測に基づいて委託を行うため、返品リスクが小さいのも特徴。すでに1200社以上の出版社がe託に参加しており、4万点以上の書籍が市川フルフィルメントセンターに持ち込まれている。