エンタメ化する「炎上」にどう向き合うべきか

スピードは加速しているがレベルは低下中

ビール世界最大手ABインベブの発泡酒ブランド「バドライト」を見てみよう。「今夜あなたの辞書から『ダメ』という言葉をなくさせる最適なビール」という新しいキャンペーンコピーに対して、レイプ犯罪を増長させると炎上したのだ(最悪のスローガンだが、故意というよりかは、単に不器用すぎて失敗したものと思われる)。タクシー配車サービスのUber(ウーバー)民間宿泊サービスAirbnb(エアビーアンドビー)も、それぞれのロゴを変えたところ袋叩きにあった。

人々は他人の不幸がたまらなく面白いのだ! 特に、ブランドは消費者に好かれようと努力を続けているため、より面白い。「ブランドによる失敗は、もはやエンターテイメントだ」と、ブランド戦略ファームのシーゲルプラスゲール(Siegel+Gale)のCEOであるハワード・ベルク氏は語った。

ソーシャルメディアリサーチ会社ブランドウォッチ(Brandwatch)のCMOであるウィル・マキネス氏は、ブランドによるオンラインでの失敗例が増えていると指摘する。これは、数自体が増えているのではなく、ソーシャルメディアによって、それらの失敗にスポットライトが当てられるから増えていると感じるのだ。「人々は、ソーシャルメディアに投稿される無神経で不愉快なコメントに注目する。これらは失敗だとわかり易い」と、彼は話す。「人々が予想していたことと異なる意見を言うと、人々は即座に憤怒という形で反応する」。

ブランドウォッチのアナリストであるケラン・テリー氏によると、#brandfail(ブランドの失敗)のハッシュタグは2016年1月1日以降、230回ほどしか使われていないと話す。多くの場合、人々がブランドに対して不快感を示すときはハッシュタグを使用しない。その代わり、ブランド名の前に@マークをつける。「ブランドとの関係性や、ブランドへの怒りは個人的なものが多いため、対象のブランドにメッセージが届くよう、メンションを飛ばしている。彼らは問題について話し合おうとしているのではなく、不満があるということをブランドに伝えたいだけなのだ」と、テリー氏はコメントした。

スピードは加速しているが、レベルは下がっている

ジョージ・ニッツバーグ氏は、教育と心理学を専門としている、コロンビア大学教員養成学部の非常勤助教授だ。彼によると、現在のこのデジタルエコシステムでは意見が作られるスピードが加速しているが、集中できる期間も短くなってきているという。人間はこの文化に慣れてしまい、衝動的な行動の制御もできなくなってきている。そして、人々は以前よりも増して権力を感じている。

サブウェイの価格が6ドル(約670円)に値上がりするときも多くのツイートがあったが、これに対しニッツバーグ氏は、消費者が意見を口にすることで何かしらの変化に貢献したと感じていると、予想している。ブランドに対するこのような社会的自己満足を満たす行為も、客観的に見ると意味のないことかもしれないが、ツイートをしている本人からすれば、決して「ささいなこと」ではない。発言するだけで満足することも多いのだ。

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