エンタメ化する「炎上」にどう向き合うべきか

スピードは加速しているがレベルは低下中

また、デジタルはブランド側のスピードも加速させている。「もう何でも良いから、配達しろ!」という考えが広まっているのだ。これはとりあえず、商品は消費者に届け、バグや欠陥などは、あとで直すという考えである。

多くの企業が消費者にメッセージを送るなか、ブランド側のコミュニケーション部隊による勉強不足が目立つと、メディア企業のミューレンロウ・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)のコミュニケーション戦略を担当するスコット・カラムビス氏は話す。「細かなことが多く、時間に限りがあるため、ミスをしないことは不可能に近い」と、彼は指摘する。「なので、いくらかの失敗は妥協しなくてはならない」とも、最後に付け加えている。

ハッシュタグによる失敗もあれば、本当の失敗もある

失敗や欠陥箇所が壮大すぎて、無視できないということも当然ある。最近発生したチポトレでの大腸菌による集団感染や、フォルクスワーゲンによる悪事は、理論上、マクドナルドのチーズスティックにモッツァレラチーズがかかっていなかったということよりも消費者を怒らせてしまう。ブランドによる重大な失敗と、軽微でバカみたいな失敗の線引きが曖昧になってきているのだ。

カラムビス氏は、ロゴの変更による混乱など、次元の低い怒りに慣れてしまったと話す。「人々は変化を嫌う。私が常に言っていることは、良い面を知れということだ。良い面があれば、確実に悪い面もあるからだ」。

これらのことにより、マーケティングの手法も変わってきている。消費者から怒りの声が挙がったとき、まず行うことは返答するのではなく、その失敗が本当に発生したかどうかを確認し、どれくらい深刻な状況なのかを把握する。「私たちが介入することでより混乱を招いてしまわないか? もしくは別の失敗が原因なのか?」。これらのことを考えなくてはならないと、シーゲルプラスゲールのベルク氏は説明する。

航空企業のソーシャルメディアマネージャーによると、企業の方針に変更はないものの、「黙っていれば明日にはみんなが忘れる」といった空気感があると話している。

また、ブランドによる失敗は大騒動になりすぎて、ブランドを孤立させてしまうこともあると、エージェンシーのアイリス・ニューヨーク(Iris New York)の計画部長であるディプティ・ブラムハンドカール氏は話す。「ハッシュタグによるブランドの失敗の問題は、注意が別の問題にも向いてしまうことだ」と、彼女は話す。「140文字の制限があるなど、共通点が多くある。現在、ブランドによる失敗はエンターテイメントと化している。綴りの間違え、翻訳の間違え、食中毒の発生など、すべてがブランドによる失敗だとされる」。本当の問題は、これらの問題に基準がないことだ。

ブラムハンドカール氏はひとつの方法として、エージェンシーやブランンドが失敗に対処する際には感情ではなく、苦情の量を見た方が良いと話している。もしくは、怒りの度合いを測れる何かしらの計測装置を作ることだ。「私たちにはいまだ、重大な問題と最悪な問題を見分ける能力がない」と、ブラムハンドカール氏はコメントする。「台風に警告があるように、私たちにも計測の基準が必要だ」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:BIG ROMAN)

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