鴻海がシャープの買収に固執する本当の理由 シャープには「郭会長の夢」がある

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鴻海の郭会長の怒りを抑えるため、シャープの高橋興三社長は2月25日、関係社員を率いて中国・深センに飛び、直接会って説明しようとしたが、初日に郭会長に会うことはできなかった。郭会長は理性を取り戻し、5890億円は重大なことであり、怒りは怒りとして、だからこそさらに一歩一歩進める必要があると考えた。

2月29日朝、鴻海は100人にも上る調査部隊を派遣し、再び大阪のシャープ本社に入った。メンバーには鴻海の各事業部門のスタッフ、財務スタッフ、今回の買収案のコンサルタントであるJPモルガンや法律顧問が含まれていた。それぞれが手分けをして、このリストの内容の調査を開始した。本稿の締め切り時点で、調査は2日目を終えたところだ。鴻海の内部関係者は、今回の調査が鴻海とシャープの提携に影響を与えるかどうか「まったく答えはない」という状態だ。

鴻海が恐れているようなケースは、すでに前例がある。2009年、太陽光発電の分野に進出しようとしていた友達光電(AU Optronics)は、1.25億米ドルで太陽電池用シリコンウエハ・メーカーM.Setekの株式半数を買収した。ところが、資本参加し、経営に参画してみると、M.Setekの偶発債務の規模が実地調査当時よりもはるかに多いことを発見した。製品価格の変動が極めて激しい電子産業にあって、買収時には偶発債務を掌握しにくいというリスクがある。

偶発債務の二の舞を恐れる鴻海

2月5日に来日した際の郭会長(撮影:ヒラオカスタジオ)

郭会長にも苦い経験がある。鴻海傘下の液晶パネル・メーカーの群創光電(Innolux)が奇美電子(Chimei Innolux Corporation)を合併した翌年となる2011年、奇美電子に対するEUによる独占禁止法に基づいた価格調査の結果が判明したのだ。

EUは奇美に対して3億ユーロ(当時の為替レートで計算して128億台湾ドル=446億円)の賠償金という判定を下し、群創に当初は予測をしていなかった損失をもたらした。こうした最近のケースから見て、シャープの偶発債務が同じように地雷のようなものであれば、鴻海として耐えきれない極めて大きな負担となる。郭会長は何回もグループ内部に対して、奇美電子の時のような過ちを絶対に二度と犯してはならず、「奇美を鏡とせよ」と要求している。

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