キリンとサントリーの経営統合、規模拡大はプラス要因《ムーディーズの業界分析》

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


コーポレート・ファイナンス・グループ
アナリスト 桜林 潤

日本の大手酒類・清涼飲料メーカーのキリンホールディングスとサントリーが経営統合の交渉をしていることが明らかになった。統合への動きは、市場の競争環境が激化する日本の飲料市場で事業を主に行う2社にとってプラス要因になりうるが、詳細が明らかになるまでムーディーズは統合を理由とした格付けアクションをとらない。

キリンと非上場会社のサントリーの統合が実現すれば、年間売上高約410億ドルのグループが誕生することになる。この売り上げ規模はアンハイザー・ブッシュ・インベブやコカ・コーラを上回り、ペプシコと肩を並べる。また、アサヒビールの約3倍となる。経営統合が実現すれば、売上高は2015年に3兆円というキリンの長期目標を一気に上回るものの、2社を合わせると国内ビール系飲料市場のシェアが50%程度となり、経営統合は独占禁止法に基づく公正取引委員会の承認を待たなくてはならない。

酒類・清涼飲料メーカーにとって、事業規模は重要であり、ムーディーズの酒類業界のグローバルな格付け手法においても重視される要因の一つである。規模が大きいほど小売業者に対する価格交渉や原材料メーカーからの調達コスト交渉における影響力が増大する。日本の大手小売業者による製品価格下げ圧力やプライベートブランド飲料の積極的な展開によって、飲料メーカーは競争激化に直面しており、収益への下方圧力がさらに強まる可能性があるため、飲料メーカーの収益にとって価格決定力はとりわけ高い重要性を持つ。

高齢化、健康志向の高まり、消費者の支出の引き締めを背景に、日本のビール系飲料の消費量は、ほぼ一貫して減少傾向にある。こうした消費者の嗜好の変化に対応するために、キリンとサントリーは低価格の発泡酒や第三のビールを販売する一方、清涼飲料を拡充するなど、製品ポートフォリオの多角化を進めてきた。下のグラフは、ビール系飲料の売上高が清涼飲料と比べ低調に推移していることを示している。

飲料の売上高(数量ベース)
指数:1999 年=1.00

出典: 社会法人日本フードサービス協会及び各社資料

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事