キリンとサントリーの経営統合、規模拡大はプラス要因《ムーディーズの業界分析》


 キリンとサントリーは、コスト削減でそれぞれ良好な実績を上げており、両社は共同配送・共同調達を行っているが、経営統合によって今後どの程度、効率性を向上できるかは不透明である。成熟した国内市場での国内メーカーの利益率は、海外市場での競合メーカーの利益率を従来から大きく下回っている。そのため、キリン、サントリー、アサヒは、国内の事業資産から生成される利益-安定的ではあるが低水準-を海外での事業買収に振り向け、アジア・太平洋地域を中心に海外での成長機会を追求してきた。

キリンは2015年までに収入の海外比率を30%まで高める計画である。経営統合の進捗が、この目標達成に大きく寄与するかどうか不透明だが、サントリーが上海周辺を中心に強固な事業拠点を築いている中国で、キリンの事業拡大を後押しする可能性はある。

キリンは2007年以降に行った事業買収の資金を主に借り入れによって調達したため、バランスシートが拡大している。また、連結子会社であるオーストラリアのビールメーカー子会社、ライオンネイサンの未保有分株式54%を年内に取得して完全子会社化することに合意したため、キリンのレバレッジは引き続き上昇するとムーディーズは予想している。事業買収の結果、キリンのリテインドキャッシュフロー/純有利子負債比率はここ数年で大きく低下した。

現在の格付けは、サントリーがA2、見通しは安定的、キリンがAa3、 引き下げ方向で見直し中で、キリンの格付けは複数ノッチ引き下げられる可能性もある。もし両社の統合が進捗する場合には、ムーディーズは統合後の事業構成、財務構成、企業統治のあり方等を総合的に勘案して、格付けに反映させていくことになろう。

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