ブリヂストンが放つ“ランフラット"の可能性、パンクOKの新タイヤが勢力図を塗り替える!?
当時、米国にいた富岡隆・ブリヂストンタイヤ商品戦略室長は、ドイツからの吉報に快哉を叫んだ。「(映画で有名な)ボンドカーZ8への装着と、量販車への納入ではわけが違うぞ!」。この頃になると乗り心地も多少改良されていたが、何より、BMW車とは相性がよかった。100万本以下で低迷していた出荷量は、これを境に伸び始める。そして今年、最初から数えて3世代目のランフラが発売されることになった。
新製品では、懸案だった乗り心地がノーマルタイヤと5%差まで画期的に改良されている。タイヤ側面を薄く軟らかくした成果だが、単に薄く軟らかいだけでは、パンク走行時にタイヤは発熱し最後は断裂してしまう。最大の課題が熱コントロール技術だった。
まず補強ゴムの素材を改良。タイヤのたわみを抑え、新素材のポリマーで摩擦をぐんと減らし発熱を抑えた。タイヤの骨格であるプライはタイヤの屈曲による熱を逆利用して収縮、補強ゴムと一緒に荷重を支える。サイド部には凹凸を付け、冷たい空気を巻き込んで表面を冷やすようにした。
最近では、社会情勢の急激な変化も、ランフラを後押ししている。
米国では07年9月から、すべての新車にタイヤ空気圧警報装置(TPMS)が付くようになっている。TPMSは、空気圧の低下を感知し、運転席モニターの表示を点灯させる装置。急低下時には警告音を発する。ファイアストンタイヤを履いたフォード車が横転する事故が頻発、大量リコール問題に発展したのを受け、TPMS装着が義務化されたのだ。
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