中国株大崩れの深層、2週間で2割も急降下

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だが、政府による火消しとは裏腹に、またも市場心理を冷やす統計結果が11日に明らかになってしまう。人民銀行の最新統計によると、7月の人民元融資は3559億元と、6月の1兆5304億元に比べて大きく落ち込んだ。金融当局の意向を慮(おもんばか)った銀行が融資を絞った結果と見られている。本格的な引き締めの予兆だと投資家は受け取り、先行きの懸念から売りを呼ぶ展開になった。

高成長に潜む危うさ

足元でさまざまな思惑が錯綜する中、今後も株価が下がり続けると見る向きは少ない。主な要因として、10月1日の国慶節に、中国が建国60周年を迎えることが挙げられる。「国慶節をできるだけよい経済状態で迎えるのが、政権の至上命題になっている」(北京の国際金融筋)。

そのため、政府は何としても相場の底割れを防ぐとの見方が根強い。すでに株取引にかかる印紙税撤廃のうわさも出ている。また、「中国のメインボードであるA株市場は参加者の95%が国内投資家で、グローバルな市場とのリンクはほとんどない。株価は政策動向と流動性の規模次第」(大和総研の肖敏捷シニアエコノミスト)。

証券市場の動揺は国内で封じ込められても、実体経済は世界とつながっている。これまで中国の成長エンジンだった輸出は、7月も前年同月比23%減と低迷。消費者物価がなおマイナスの現状では、国内消費の強さにも確信が持てない。政府は輸出の回復まで景気刺激を続ける構えだが、流動性の急拡大は将来のインフレの芽ともなっている。真夏の相場急落は、中国経済の成長が危ういバランスの上にあることをあらためて示した。

(photo:Baycrest,Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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