■アップセルとクロスセルで囲い込み
最初から「体づくり」といわれれば、なかなかやる気は出ないが、一度成功体験を味わっているので、ハードルは低くなる。うまいシカケだ。
さらに、バック転をマスターすれば、バック転・側転や前方転回・倒立などの基本的なアクロバット技を習得し、ロンダートからの連続技や前方・側方・後方宙返りなどの発展技を目標にがんばるクラスもある。体育大のお兄さんみたいにぐるんぐるん回れてしまうのだ。さらにあこがれの「宙返り」クラスもある。
アップセリング。顧客に同種の商品の買い換え、買い増しを勧めること。一つ習得すれば、その快感がクセになり、また次を習得したくなる。そしてまさに、幼き日のあこがれであるライダーの体術そのものが身に付けることができるという仕掛けだ。
一方、関連商品のお勧めは「クロスセリング」という。カラダを動かす快感に目覚めたなら、なつかしのマット運動から高度な連続技までを習得できるというクラスで、「おとなの体操教室」を楽しむもよし、アクションや演舞等で使えるデモンストレーションキック(蹴り技)専門クラスというキック専門クラスで「ライダーキック」に磨きをかけるもよし。
さらに、趣旨を変えてダンスにチャレンジしたり、本格的に体づくりをしたりという展開もある。同スタジオは「18種類51のクラス」という豊富なメニュー、多彩な講師陣でクロスセリングのビジネスモデルを強力に固めているのだ。
見込み客の潜在ニーズを掘り起こし、そのニーズが簡便に充足できると提案し、「バック転」というフックを用意、まずは小さな成功体験を提供する。顧客化した後には、アップセリング、クロスセリングで囲い込みを図り、ビジネスを重層化させていく。
筆者も出来れば通いたいぐらいだ。プレゼンの際に、会議室の入り口からプロジェクターまでバック転で移動してみる。事務所のある新橋の駅前で宙返りを決める。愛娘から「お父さんバック転やって」とせがまれるだけでもいい。教鞭をとっている青山学院大学やグロービス経営大学院のクラスで披露すれば、“バック転先生”とモテモテじゃないか……。
金森努(かなもり・つとむ)

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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