トヨタも日産も工場を相次ぎ新増設するが…九州「自動車」アイランド 熱狂の陰に潜む”死角”
海外市場に活路を見いだす自動車業界が九州北部への投資を加速させている。そんな活況を満喫しようという矢先の事態急転。急激な円高、そして同じく誘致に熱を上げる「東北」との国内競争にも火がついた
福岡県京都(みやこ)郡苅田(かんだ)町。苅田港本港のすぐ横に、日産自動車のプライベートの専用埠頭がある。モータープールに並ぶのは、同じ敷地内の九州工場から運ばれた、出荷前の新車群だ。海沿いに接岸しているのは、1隻4000~5000台は積める日産専用船。日産はここからほぼ毎日、ドア・トゥ・ドアで海外へ輸出している。港直結ゆえ、工場から陸送する手間もかからない
日産の九州工場は主に、SUV(スポーツ多目的車)などの生産を担当している。新車が端境期だったため3期連続で生産実績は落ちていたが、2007年度には40万台まで回復した。現在の能力は53万台だが、09年には隣接地に日産車体九州の本社工場が稼働し、新たに年12万台が加わる。生産能力65万台は日産グループでも最大級だ。
ここまで回復したのは、日産全体の生産拡大はもちろんだが、九州工場が確立した「同期生産」の実績が大きい。同期生産では、生産する6日前には、出荷までの工程をプラン。それに合わせ、部品のキット供給などあらゆる手法を駆使し、精度とスピードを向上させる。最新の第2ラインでは、1台当たりタクトタイム(作業時間)が57秒と1分を切り、1日2000台を生産可能にした。
結果的に、量産までの準備期間を、従来の平均3カ月から3週間へ劇的に短縮。07年11月からは4カ月間で4車種もの新車を立ち上げたが、これほどの短期間で複数車種をこなせるのは、他メーカーを含めても極めて珍しい。
日本初となるクリーンディーゼル乗用車「エクストレイル」も、国内では九州工場のみで組み立てられ、今秋投入される。「グローバル日産の中でウチがどう生き残るか。それしか頭にない」と川瀬賢三・日産九州工場長の説明も熱い。
1975年の日産進出を第1次、92年のトヨタ進出を第2次とすれば、まさに第3次ブームを迎えている九州。特に今回盛り上がっている要因は、大きく三つある。
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