トヨタも日産も工場を相次ぎ新増設するが…九州「自動車」アイランド 熱狂の陰に潜む”死角”

円高で問われる競争力 国内でも「東北」が台頭

自動車大手が内外で工場分散を加速し、日産やトヨタ自動車、ダイハツ工業の相次ぐ工場新増設で、今、沸きに沸いている九州。が、過熱の向こうには“死角”も潜んでいる。ここにきて浮上した大問題。それが急速な円高だ。

一時は1ドル=95円にまで達した為替変動は、輸出に依存していた国内の工場を大きく揺さぶる。日本市場が4年連続のマイナス成長を余儀なくされる中、当面の売り先として頼れるのはやはり海外市場しかない。

中国を軸にアジア向けが拡大したとはいえ、九州から輸出する自動車の半数以上はまだ北米向け。積極的な設備増強の結果、大手メーカー3社の生産能力は159万台まで膨らむ見通しで、減産となれば、歯車は再び逆回転を起こしかねない。中長期的には新興国でも資源国でも、需要のある地で生産するのが自動車メーカーの基本路線である以上、少しでも付加価値をつけないかぎり、淘汰の波にのみ込まれてしまう。

競争相手は海外だけではない。国内の他地域との競合も迫る。

トヨタグループでは、車両メーカーのセントラル自動車が10年をメドに、宮城県大衡村へと本社工場を移転する予定。セントラル自動車の進出には、北海道と宮城県の両知事がトップセールスによる熱い誘致合戦を展開した。トヨタ本体も同時期に、東北初のエンジン工場を宮城県内で建設する方針という。関東自工の車両工場がある岩手県へは、エンジンを運ぶトヨタ専用列車が愛知県から走っているが、宮城県でエンジンをつくれば輸送費を大幅に減らせる。

「工場の老朽化で移転せざるをえなかった」とセントラル自動車幹部は事情を明かす。車種の見直し、設備の更新も含めて、国内工場の再編はもはや待ったなし。にわかに、九州に続く“新たな受け皿”として、東北が急浮上しつつあるのだ。

こうした急速な環境変化に対し、九州では、新たに注目すべき展開が起きようとしている。苅田町にある日産の専用港から、トヨタと日産双方のクルマを関東まで輸送することで、両社ほぼ合意ができているという。「物流面など手をつなげるところはつなぎたい」(日産幹部)。ライバル同士が連携可能な部分で提携することで、エリアとしての九州の競争力も高まるはずだ。

日本の自動車産業の新天地として、九州が不動の地位を築けるか否か。ここからが勝敗を分ける。

(撮影:梅谷秀司、尾形文繁 =週刊東洋経済)

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