イノベーションの新時代 C・K・プラハラード、M・S・クリシュナン著/有賀裕子訳 ~ICTで意思疎通 刊行待たれる事例研究編
タイトルの「イノベーション」との関連については、米国の観光会社の例などが使われる。顧客数があまりに多く、顧客のニーズを探るのが困難であった会社が、外部のマーケティング分析会社を使ってデータ解析をし、個客がどの時期にどのリゾートホテルを何日間滞在する可能性があるかまで予測できるようになった、つまりイノベーション(革新)がICTの有効活用から成就した、というのだ。また、レガシー(遺産)が技術上のものであれ、組織や個人の思い込みであれ、新たな価値の創造を阻む危険性も指摘している。
技術論でもある本書に辛口の評価を加えるとすれば、竜頭蛇尾となっていること、事例研究が概略にとどまっていることだ。事例から概念を検証しようとする読者は本書の続編、あるいは事例研究編を待つ必要がある。ただ、ICTの専門家ではないビジネスマン、経営者にとっての考えるヒントが、そこここにちりばめられている、と言うことはできよう。
C.K.Prahalad
米国ミシガン大学ビジネススクール教授(企業戦略、国際ビジネス)。1941年生まれ。イーストマン・コダック、AT&T、ハネウェルなど国際企業でコンサルタントを務める。
M.S.Krishnan
ミシガン大学ビジネススクール教授(ビジネスIT)。インドのデリー大学でコンピュータ科学の学位。米カーネギーメロン大学で博士号(産業管理)。1996年からミシガン大学で教鞭。
日本経済新聞出版社 2100円 356ページ
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