イノベーションの新時代 C・K・プラハラード、M・S・クリシュナン著/有賀裕子訳 ~ICTで意思疎通 刊行待たれる事例研究編

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イノベーションの新時代 C・K・プラハラード、M・S・クリシュナン著/有賀裕子訳 ~ICTで意思疎通 刊行待たれる事例研究編

評者 津田倫男 フレイムワーク・マネジメント代表取締役

 本書は、N=1、R=Gなどのコンセプトで知られるプラハラード教授によるICT(Infor-
mation and Communication Technology:情報通信技術)に関する最新作である。近年、ITにC(Communication:通信)を加えて、ICTと使われることが増えた背景には、情報は商品やサービスの供給者が一方的に流しても意味がない、顧客からのフィードバックを通して、意思疎通を図ることが大切だという考え方の浸透がある。

本書は、N=1(対象顧客=1人:個客への対応)、R=G(資源=グローバル:グローバル資源の活用)をICTを使って生かすための基本概念から、説き起こしている。市場の変容は、「個客経験の共創」と「グローバル資源の活用」という二つの概念に支えられているとし、一人の顧客に注意を集中する必要性と、社内外の資源を十分に使うことの重要性が強調される。

続けて、三つの変化に注意を喚起する。企業はメーカーであっても、モノからサービスへ、という発想転換をしなければならない。顧客との間にサービスを媒介とした新たな関係を構築する必要性がある。そして、B2B(法人顧客向け)からB2C(個人顧客向け)へとビジネスの本質が変わってきていることだ。そこから業務プロセス改善論となり、戦略、ビジネスモデル、日常業務をつなぐものとしての業務プロセス管理の重要性とICTの活用方法が説かれる。CIO(最高情報責任者)をおかないインドの銀行のあり方などは、ICT管理を一部の人間に委ねず、幅広い人間で共有、共創してゆくことが大切であるという例として読める。

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