何もかも手にしたはずの美人妻が不幸な理由

東京の「婚活事情」最前線<9>

「そうは言っても、子ども優先だからそんなに会ってないけどね。でも旦那とはもう仮面夫婦だし、好きな人がいるだけで生活に張りが出るの。私まだまだイケるんだって。彼は私のこと旦那より理解してくれるし、仕事も前より頑張ってるの。結婚してるからって男の人に頼らないで、自立するのも大事でしょ」

相変わらず、亜美の表情や態度には悪びれた様子も罪悪感の欠片も見当たらない。むしろ以前の不安を自分で払拭したという自信すら伺える。

「もちろん私は子持ちだし、彼の真意は疑ったらキリがないけど...。でも彼も本気だって思うしか私はできないの。それに長い目で見て、いつか時が来たら彼と一緒になれたらいいなって思うの。私初めてこんなに本気で好きな人ができたと思う。もちろん、心がないから仮面夫婦生活は辛いけど...」

欲深さと向上心は紙一重

亜美は美人で女らしい温和な仮面を被っているが、恐らく中身の性格は男寄りで、根っからのハンター気質なのだと思う。常に何か目標を追い求め、現状に満足することはない。何かを夢中に追い求めているときは良いが、いったん手に入れると飽きてしまう。なので言ってしまえば、今のような不倫生活が亜美のような女にはピッタリで、気も引き締まるのだろう。

そしてさらに厄介なことに、この女は他人の芝生も青く見える。亜美は主婦である有加子のような女を羨むだけでなく、同じ会社の40近い独身の女にまで「自由な一人暮らしが羨ましいです」とあの可憐な笑顔で放ったらしい。本人は全く悪気はなく、むしろ心底彼女たちを尊敬した上で本気で羨んでいるのであるが、一般的に何もかも手に入れた美しい女がそんなセリフを口にしても嫌味にしか聞こえない。実際、亜美は有加子が不妊治療で苦労していることは知らず、自分の人生相談をしょっちゅう持ちかけているらしい。

毎度のことだが、亜美を非難したり批判する気はない。特に都会では、実にいろいろなタイプの人間が存在しコミュニティが成り立っていて、そこに面白味があるからだ。

ただ、亜美のために一つ言えるとすれば、彼女は何もかも自分のことをばかり優先に考えすぎている。言い方を変えれば、ベクトルが自分に向きすぎている。自分の幸せ、自分の夢、自分の価値。上へ上へと、良く言えば向上心が強すぎて、明らかに幸せな生活を手に入れているのにも関わらず満足できない。灯台下暗しなのだ。

今の亜美が有加子のように稼ぎの良い夫を捕まえて優雅生活を手に入れたとしても、きっと何かしらの不平不満を見つけて浮気したりするのだろう。

人は本来、誰か他人の役に立ったり幸せにしたりすることで、本人も満足し幸せを感じるように出来ている。自分に向きすぎている関心を家族や他人に向けて、誰かのためにと生活し少し意識を変えるだけで、人は意外と楽になり心を満たすことができる。これは綺麗事ではなく人間の本質的なものだ。

都会の特にこのような恋愛市場のアッパー層の男女たちは、競争社会に慣れ過ぎてしまっているため、私利私欲や見栄しがらみ先行し、本来の幸せを実感できない者が多い。自分のことばかり考えていると、その欲は果てることなく、ただ現状に満足できず疲れと渇きばかりが募る。

向上心が強いことは決して悪いことではないが、この種の男女にとって、「幸せ」とは一体何なのか。亜美のような女は、東京に多く生息している。

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