何もかも手にしたはずの美人妻が不幸な理由

東京の「婚活事情」最前線<9>

「私は何のために、あんなに男の人のことばっかり考えて生きてきたんだろう。最近もう鬱になりそうなの」

ふぅと溜息をつくときでさえ、亜美は清らかな笑顔を浮かべている。

そんなにすごく贅沢な暮らしがしたいわけじゃないの。

確かに亜美は昔から、いつも男のことを考えている女だった。男ウケしそうなファッションで、髪形やメイクもいつも清潔感があり、いつも可憐な笑顔を浮かべているまさに女子アナのようなタイプの女。「正直いうと、年収3000万以上の人と結婚したいの。もうこれだけは自分に嘘はつけないの」。

今日とまったく同じ笑顔を浮かべて、20代の彼女はいつもそんなことを言いながら出会いに勤しんでいた。悪気は全くないのだが、こういうセリフを素直にサラリと吐いてしまう、昔から少し抜けた女だった。亜美を天然だという友人も多い。

「私はそんなにすごく贅沢な暮らしがしたいわけじゃないの。ただ、お金の心配をしないで港区に住みたいの。そうしたら3000万くらい必要でしょ?そんなこと言って、一般的にサイテーな女だって言われるのは分かるけど、でも私の目標なの」

そう言う彼女の表情はとても切実で、真面目な受験生のような印象を受けたのを覚えている。恋愛や結婚に関する本や雑誌を参考書のように読み漁り、美容にも気を使い、定期的に運動をして美しい外見も保っていた。そういった男たちを射止めるための努力は惜しんでいなかったのである。

美人で華やか、そして明るい性格の彼女の周りには、もちろん男がたくさんいた。エリートサラリーマンや医者、お坊ちゃま。実際何人もの男と次々と付き合い、合コンなどの出会いの場にも頻繁に顔を出していた。

惚れっぽい亜美は出歩く先々で、簡単に恋に落ちていた。あれも好き、これも好き。全く悪びれる様子なく、心の赴くままにフラフラと男たちの間を渡り歩き、いつも打算なく真剣に恋をしていた。

そして、亜美は東京恋愛市場の最前線でそんな生活をしながら、いつも清純派アイドルのように穢れないオーラを身にまとう、不思議な女だった。

「はぁ。私、結婚することになっちゃう。どうしよう...」

そんな生活をしていた亜美は、当時数ヵ月付き合っていた男の子供を妊娠し、結婚することになった。

「もう私も30歳だし、つべこべ言わず結婚すべきなのは分かるけど、何だか本当にこの人と結婚していいのか分からない。年収も微妙だし...」

結婚相手は年収約1000万円の大手商社勤務の好青年。優柔不断な彼女をすべて包み込むような性格の持ち主という優良物件であったが、亜美は明らかに夫の年収に不満気だった。後戻りができないことは分かりながら、なぜ他にも選択肢がある中、このタイミングで妊娠したのかとマリッジブルーとマタニティブルーを同時に患っていた。

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