上場5子会社を吸収、日立の意外な実行力
7873億円という巨額の最終赤字を前期に計上した日立製作所。7月28日、上場子会社5社を完全子会社化すると発表した。8月20日に株式公開買い付け(TOB)を開始し、最大2790億円を投じて株式を取得する。
対象となるのは、情報系の日立情報システムズなど3社、プラント構築の日立プラントテクノロジー、記録メディアやリチウムイオン電池の日立マクセル。成長分野の電力、交通、情報通信など社会インフラを強化して、「脱総合電機」を進める狙いがある。
子会社から返り咲き、4月にトップに就任した川村隆会長兼社長。69歳のベテラン復帰と注目されたが、周囲の反応は冷ややかだった。それゆえに就任4カ月で積年の課題を実行に移したスピードは“肯定的な驚き”として受け止められている。
出戻り組が子会社説得
日立は事業を積極的に分社化し、自主独立を尊重することでグループを拡大してきた。今年3月末時点で連結子会社は943社に上り、うち上場子会社は16社ある。
だが親子上場には、海外投資家を中心に批判は根強い。さらに近年は日立本体の収益力が低下し、子会社への利益依存度が高まっている。子会社の少数株主持ち分が控除されることで、本体株主に帰属する純益が押し下げられることも問題だった。
「今までグループ会社は自主独立で、本体は口を出さなかった。当然、なぜだというのは出てくる」。川村社長は子会社側の反発を認めたうえで「グループ全体の最適化を説明した」と言う。