巨額の営業外費用や特別損失は格付けにどう影響したか--総合電機5社をチェック《スタンダード&プアーズの業界展望》
5社合計の株主資本は4割近く減少、資本の質にも懸念が残る
ITバブルが崩壊した後の2002年3月期を底に、日本の総合電機5社の財務内容は景気の回復や海外市場の好調と歩調を合わせて改善基調をたどってきたが、2009年3月期の5社合計の営業利益は、792億円になり、前の期の1兆2125億円から93%も減少した。また、当期損益は1兆5,277億円の赤字になり、前の期の2,981億円の黒字から一転、大幅赤字になった。その結果、株主資本は前の期末に比べて38%も減少した。フリー・キャッシュフローも大幅に減少したため、5社合計の純有利子負債も19%増加して4兆8269億円となった。その結果、営業キャッシュフローと純有利子負債、純有利子負債と純資産の比率も大きく悪化している。
また、株主資本の質にも懸念が残る。たとえば、株主資本に対するネットの繰り延べ税金資産(繰り延べ税金資産から評価性引当額と繰り延べ税金負債を減じたもの)の比率では、日立製作所は、依然として20%台半ばの高い水準である。東芝はさらに厳しく、6月に普通株増資を実施した後でも60%程度と高い。将来のキャッシュフロー見通しがさらに低下すれば、追加で繰り延べ税金資産の取り崩しを余儀なくされ、2009年3月期と同様に業績の悪化に加えて二重に株主資本が毀損する状況が続く懸念がある。
表2: 日本の総合電機5社の主な業績
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