大ヒット連発!ピクサー映画の秘密、経営者よりも現場力が成功のカギ


 ジョブズも当初はコンピュータ開発の役割を期待していたが、営業用のサンプル映像という名目でラセターらが制作した何本もの短編CGアニメが評判を呼び始めると、誰もがCGアニメの可能性に気づいた。その一社が、かつてラセターのCGアニメ企画をボツにしたディズニーだった。1991年にピクサーはディズニー向けに長編CGアニメを制作する契約を締結。そして生まれたのが『トイ・ストーリー』だった。

その後もヒットを連発したピクサーには大きな悩みがあった。ディズニーとの契約上、映画がヒットしても興行収入や関連商品から得られた利益はディズニーとの折半である。契約満了時にはディズニーとたもとを分かち他の配給会社と組むことも検討した。カネ儲けの手段としては、そのほうが得策かもしれない。しかしディズニーはこれまで制作したピクサー映画の続編を製作する権利を持っており、続編をピクサーが拒否した場合、ピクサー以外の会社に続編を制作させる懸念もあった。自分たちが作った愛着ある作品の続編が他社の手に委ねられる。これにラセターたちは我慢ができなかった。

結局、ピクサーはディズニーの子会社となって映画を作り続ける道を選んだ。だが屈服したわけではない。ラセターはディズニーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして迎え入れられた。かつてディズニーを解雇された男が、ディズニー映画の根幹部分を担うことになったのだ。

「ビジネスモデルではよい映画はできない。大事なのは人と人との共同作業」とラセターは言う。「売り上げのための続編ではなく、自分が見たい続編ならスタッフもやる気になる」。停滞の時代でも、作品への愛があれば優れた映画を生み続けることは可能なのだ。ピクサーがまさにその好例である。=敬称略=

(週刊東洋経済 撮影:吉野純治)

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