財務諸表に表れない資産の有効利用を、知財も自前主義脱皮へ

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自社知財の洗い出しを

製品サイクルのスピードが劇的に速くなっていることから、自社技術だけでは市場の動きに間に合わないという危機感は、多くの経営者が持っている。だが、残念ながら、まだまだ自社の技術開発と他社技術の導入の組み合わせを戦略的にとらえているところは少ない。

最初の問題は、社内技術をきちんと区分けできていないことだ。最低でも「自社のコア技術」「新規事業のタネになる技術」「非コア技術」くらいには分類しておかなければ、技術の外部調達や外販など到底不可能だ。それどころか、すでに保有する技術の類似の技術開発に資金と時間をかけている、という笑えない話も多い。

さらに自社技術を分類するためには、体系的、包括的なビジョンが必要だ。自社に必要な技術かどうかを開発者の主観ではなく、経営戦略全体の中でとらえる必要がある。ビジョンがなければ、コストと時間を投入した後でクロスライセンスなど場当たり的な対処しかできない。もっと早い段階で他社の先行技術を認識していれば、その段階から開発資金やスタッフを他に効率よく回せるはずだ。

難しいのは、専門の人員を配置しなければならない点だろう。業績が厳しい中でコストはかけられない。だが、景気低迷の今だからこそ、そういう内部固めに時間を割くことができる。

市場の求める技術の流れを理解し、経営戦略の中で自社技術をどう位置づけるか、判断できる人材の育成には時間がかかる。特許流通情報アドバイザーや、やはり前出の研修館が委託契約を結んでいる特許情報活用アドバイザーに知財専門部署立ち上げに協力してもらうのもいい。

最も重要なことは、一部の研究者の熱意や経営者の恣意的な判断に振り回されない基準作りだろう。資材購入の前に在庫をチェックしない購買担当はいない。長期的なビジョンに立った経営戦略のためにも、自社知財の洗い出しが有用なプロセスとなるのは間違いない。

(小長洋子 =週刊東洋経済)

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