私がグリーンスパンに同情してしまう理由--ブラッド・デロング カリフォルニア大学バークレー校教授



 当時、グリーンスパンは以下のように考えていた。金利が上昇すれば何百万人という人が失業し、それは誰の利益にもならない。逆に金利が下落すれば、住宅建設部門で雇用が増え、所得の増えた労働者に商品を売るために生産が増える。インフレを引き起こさずに完全雇用を達成できれば、高失業を引き起こすより好ましい。それに、バブルが破裂して恐慌を引き起こす事態が発生したとしても、FRBはその連鎖を断ち切る政策手段を持っている。

米国の脅威だったのは インフレではなくデフレ

今から振り返ってみれば、グリーンスパンは間違っていた。だが、今われわれが問うべきは、「グリーンスパンの賭けは好ましいものだったのか? 将来、03年当時と似た状況に直面したとき、バブルを引き起こすリスクを冒してでも完全雇用を維持するべきかどうか」ということだ。

たとえば、中央銀行は「もし結果的にインフレスパイラルに陥る懸念があれば、完全雇用を実現するために金利を引き下げることは軽率である」という立場をとっている。

ただ正直に言って、私はこの議論でどちらの側につくべきか迷っている。ある日には、「将来、中央銀行は、資産バブル発生のリスクがあるときは、完全雇用実現のためであっても金利引き下げは賢明ではないと認めるに違いない」と思い、また別の日には、「グリーンスパンの01年から04年の決定は道理にかなったものであった」と思ったりもする。

私が一つ自信を持って言えるのは、現在の議論は問題の設定の仕方自体が間違っているということだ。

人々は、グリーンスパンに対し「積極的に金利を自然利子率以下に引き下げた」として非難している。しかし、自然利子率とはそもそも何なのか。1920年代にスウェーデンの経済学者クヌート・ヴィクセルは、自然利子率を“好ましい投資”と“好ましい貯蓄”を一致させる利子率と定義した。

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