私がグリーンスパンに同情してしまう理由--ブラッド・デロング カリフォルニア大学バークレー校教授

端的に言うと、自然利子率とは「物価を一定に保つ金利水準」のことである。つまり、総需要が総供給を上回ったとしても消費者物価や1次産品価格、あるいは賃金に上昇圧力がかからない利子率、あるいは総供給が総需要を上回ったとしても価格引き下げ圧力がかからない利子率を意味している。
ヴィクセルの定義に基づけば、2000年代初めに市場金利は自然金利を上回っていた。インフレの加速ではなく、デフレの脅威が存在していたのである。バーナンキ現FRB議長が説明しているように、当時は世界的な貯蓄過剰のため自然利子率は低かったのである。
00年代初めのグリーンスパンの政策は間違っていたと主張することは可能だ。しかし、彼が積極的に金利を自然利子率以下に引き下げたと主張することはできない。むしろ、グリーンスパンの失敗は(それが失敗といえるなら)、市場の規制に失敗し、自然利子率以上に金利を引き上げた点にある。それが01年に始まるリセッションを深刻化させ、長引かせることになったのだ。
私は、多くの失業者を生んででも、金利を自然利子率以上に引き上げ、住宅金融バブルを阻止する、という決断を下さなかったグリーンスパンの判断を誤りとは思っていない。それ以外にも、現在の破局的な状況を作り出した過ちはたくさんある。
Brad Delong
1960年生まれ。ハーバード大学で経済学博士号を取得。93~95年に財務副次官補として93年度予算、GATTウルグアイ・ラウンド、医療制度改革に携わった。97年から現職。政治・経済のブログ「Grasping Reality with Both Hands」でも有名。
(photo:House Financial Services Committee)
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