長期金利は峠を越えた!? 財政改革混迷で高まる「悪い金利上昇」の圧力
長期金利(新発10年物国債利回り)は6月11日に付けた1・56%が今年のピークになる--。債券市場ではそうした見方が大方の共通認識になりつつある。「補正予算に伴う7月の国債増発はほぼ織り込んだ。今後は来年にかけての景気悪化懸念を織り込む展開。金融機関の資金運用難も続き、基本的に長期金利が上がる状況にはない」(日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト)。
実際、市場ではデフレ再燃さえ現実味を増す。5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比1・1%低下し、1971年以来最大の下落となった。昨年のガソリン価格高騰の反動が主因とはいえ、今後もマイナスが続くとの見方は多い。長期国債の利回りも1・3%台まで反落してきている。
財政プレミアムをデフレ圧力が相殺
では、長期金利はこのまま低位安定が続くのか。
10年物国債利回りは長期金利の指標であり、企業の設備投資向け融資や住宅ローンの金利に影響を与える。第一生命経済研究所では、長期金利が1%上昇すると、年間の経済成長率と経常利益を各0・34%、6・7%押し下げると試算している。
金利は、いわば「体温」であり、景気が好転して体が温まれば上昇する。これは「よい金利上昇」。逆に、景気が悪く病弱時に上がれば「悪い金利上昇」となる。その主因が、国債増発に伴う需給悪化であり、「財政プレミアム」と呼ばれるものだ。
長期金利は昨年末にかけ1・1%台まで低下。その後反転し、6月に1・56%の直近ピークを記録した。背景には、一部景気指標の好転や株価の反騰に加え、大型補正予算や税収減に伴う国債発行増がある。
「2003年の株価急落時には長期金利は0・5%を割った。一方、株価がバブル後最安値を更新した今年3月には、長期金利は1・3%程度とあまり下がらなかった。この差は何なのか。財政悪化のプレミアムが影響しているのは間違いない」(バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト)。