再就職支援に7000億円投入でも現場体制が未整備、しょせんは“見せガネ”か

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新たに生み出される“失われた世代”

まさに、再就職支援策は至れり尽くせりのように見える。ただし、こうした支援策は必ずしも、スムーズに軌道に乗るわけではない。

たとえば3000人弱への貸し付けを想定して昨年11月にスタートした「技能者育成資金制度」。職業能力開発学校に在籍中、無利子で資金の借り入れをできる制度だ。訓練後6カ月以内に安定的な職に就いた場合は返済免除、積極的な就職活動を行った場合には8割の返済免除となるため極めて魅力的なのだが、5月のゴールデンウイーク明けまで利用者数は100件程度にすぎなかった。5月11日からは貸与条件をほぼ無条件といえるほど大幅に緩和したのだが、それでも6月29日時点の貸し付け決定件数は201件にすぎない。

当初想定との乖離は、至るところで生じている。事務手続きに労力と時間がかかるため、利用希望者が途中で断念するケースが多いのだ。「失業保険と生活保護の間に7種類ものセーフティネットが用意され、すでに昨年度補正と今年度本予算で5941億円も予算がついている。そこに7000億円の基金が加わっても、事務処理能力が伴っていないのだから、しょせん見せガネ。利用が少なければ国債運用するだけで終わってしまう」と民主党の大塚耕平・参議院議員は指摘する。

再就職支援の主な対象は、1990年代の就職難の時代に、希望に反して正社員になれなかったロストジェネレーションだ。そして、多くの企業は昨年度以降、新卒採用に急ブレーキを踏んだ。失われた世代が再び生まれてしまう可能性がある。

「雇用の調整弁が新卒採用しかないのは異常。日本では、新卒時に就職できなければまずはい上がれない。正社員優遇、全員終身雇用といった雇用慣行を見直さなければ、ロストジェネレーションの悲劇は終わらない」--産業再生機構COO時代に、雇用維持を基本とした企業再建を進めた経営共創基盤代表の冨山和彦氏はこう言う。

冨山氏は今、大企業経営者にけしかけて回っている。「ホンネでは非正規社員を都合よく使う仕組みがもたないことはわかっていますよね、早くホンネの議論をしましょう」。

非正規を中心に、雇用情勢はさらに悪化する可能性が高い。見せガネの消化に腐心するより、構造的な問題の解決へ向けた議論に力を振り向けるべきだろう。

(週刊東洋経済)

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