韓国が恐れる「チャイワン」で、台湾経済の浮上はなるか

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とはいえ、チャイワンが今後も進展するかどうかは、やはり台湾の姿勢の明確さ次第だ。

中台間の問題には、台湾側で必ず「アイデンティティ」の問題が生じる。全人口の8割が「台湾は台湾、中国とは別」と考えるなかで、最大野党の民進党をはじめ「中台経済交流は大陸が台湾をのみ込む口実を与えるだけ」と反対する声も強い。馬英九政権発足以来の、一連の交流政策は台湾市民の少なからぬ支持を得ているものの、同時に、大陸側の攻勢にはひとつひとつ敏感にならざるを得ないのが台湾だ。

台湾側の交流政策は、いわば「中国資本の呼び水」。だからこそ、「台湾のなかで何をするのか、馬英九政権の出方がまだ不透明」と伊藤氏は指摘する。すなわち、中国の資本や市場を利用するのはよい、だが中国との“差別化”、ひいては世界経済のなかでの差別化をどう図っていくのかがよくわからない、というのだ。

産業イノベーションを進める政策や人材育成策はすでに打ち出しているものの、「現実の成果と合わせ、何をやるべきで何をやっていくのかとうまく宣伝し、差別化を図るロジックがほしいところ」(伊藤氏)。

景気低迷の打開策として大きく期待される中台経済交流も、その先につながる台湾経済の先進国化が見えるほどには、馬英九政権の足元もしっかりはしていないようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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