「商売の本質を知らない人」の浅すぎる思慮 「インバウンド狙い」という時点でアウト!

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石川:そうすると車のコモディティ化が進んでいくというシナリオになると思うんです。

2種類の未来がイメージできて「借りるんだったらなんでもよくね?」と考えて、その中で商品開発をするシナリオもあれば、「ずっと同じ車に乗る必要ないんだから、いろんな好きな車に乗れるよね」と考えると、「すっごい派手なオープンカーに乗ってみようか」とか、逆に個性化が進むシナリオにもなる。そういうふうに考えていくと、シナリオ次第で商品のアイデアはいろいろ出せると思う。

発想法を磨くのはなかなか難しい気がするんですけど、想像力をつけることは努力すればやりやすい気がしているんですね。

たとえば、世の中が自動運転になって「今ハンドルを握っていない」というのをイメージしたときに、どんなものがそこに求められるかっていうのは、まだ考えやすい気がするんですね。

言葉が機能の押しつけになっている?

常見:私は「自動運転」って言葉すら手放すと良いと思うのです。

石川:はー。

常見:「自動運転」って言葉になった瞬間、実は機能の押し付けとか売りつけでしかないなと思っていて。「絶対事故りたくない!」とか、「将来、寝ててもお酒飲んでいても自分のクルマで移動できて、事故を起こさず家に帰れる時代にしたい」とか。

ほかに気になったのが、未来予測です。最近気づいたのが、官庁やリクルートワークス研究所などのレポートを見ると「楽観シナリオ」と「悲観シナリオ」の両方の数字が出てるんですよね。バラ色の未来もあり得るし、マイナスの未来もあり得るなと。

そうそう、昨年は「5年後」という言葉がよく使われたんですよ。2020年が東京オリンピックだからなんです。ただね、今年に入ってから、2020年という言葉は出てるけど、5年後って言葉は出てないんですよ。

石川:中途半端に4年後になってしまいますね。

常見:そう。あと、東京オリンピックのあとの世の中が怖いと思っています。実際いろいろな予測データが出ていますけど、比較的外さないのは人口なんですよね。人口に関するデータを見ていると、危険なのは見えていて、労働力人口は少なくなっていくし、このまま少子化が進むと大変なことになるとか、働き盛りの人に介護が始まるとかね。もちろん、破壊的なイノベーションですべてが解決されるかもしれませんが。

石川:想像はある程度、理屈でできるんですよね。「昔のようなお父さん、お母さん、子供ふたりという家族構成じゃなくなっているよな」ということは、数字を見れば想像できますよね。

僕はなにか新しい発想をしようとしたとき、「そのときの家の中はどうなっているのかな」など、将来どうなっていくかというシナリオを考える力がすごく大事だと思うんです。

たとえばドラマを観ていたり、映画を観ていたりするときに、「このあとこの二人はどうなるかな?」って考えるだけでもシナリオ力のトレーニングですよね。「次回どうなるの?別れちゃうのかな」とか。それを考えていくこと自体、発想法の中で言うと、トレーニングだなと思いますね。

 

というわけで、今回は主に「不の解消」編をお届けしました。次回は「快の追求」編。お楽しみに!
 

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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