常見:石川さんもおっしゃっていたのですが、多くの人って算数から入って話をするんですよ。「今後インバウンドの観光客は何千万人に増えるだろう」とか。それって、全然、お客さんに寄り添ってないと思うのですよね。
石川:いろんな企業でお仕事してきましたが、事業計画書の最初にグラフが来ることが多いんですよね。「マーケットがこう伸びております」「我が社のシェアは何%になっており……」と折れ線グラフ、円グラフがあって。
僕が「この会社、商売うまいな」と思う会社の人は、「この間、浅草に行って外国人に聞いてきたら、夜こういうときに暇で困っているって言うんですよね」と言うわけです。その一言のほうがよっぽどリアリティがあって、社長が食いつくんですよね。「もうちょっと聞かせろよ、それは」っていう話になるんです。グラフの話をしても、社長は誰もなるほどとは思わないですよね。その一歩ってすごく大きいと思います。
常見:なるほど。
まずは、日本人が一番欲しいものをつくるべき
高橋:僕もインバウンドに関しては思うことがあって。「インバウンド狙い」とか言ってモノを作った時点でダメだと思うんです。狙いって、なんだと。まず日本国内の消費者が一番ほしいものをつくるべきだと思うんです。アジアの方はその日本のいいものを求めているわけで。外国人観光客なら、日本っぽいものは何でもほしいんじゃないかっていう時点で、もうダメなマーケティングですよね。
常見:いっぱい中国人が来ているから、でもよくわからないだろうから、このレベルの寿司でも売れるだろうみたいな。あと8万円の炊飯器を売りつけておけばいいだろうって。全然、「不の解消」でも「快の追求」でもないと思うんですよね。
高橋:そういう考え方は失礼ですよね。
常見:たとえば、上海の郊外に住んでいて、最近、一族が不動産で儲けて豊かになった陳さんという若い男性が初めて日本に来たとき、どうやったら彼女にいいお土産を買えるのか、といった物語のほうが大事じゃないですか。
高橋:そうですね。僕も定点観測しているお店があって、海外の方がよく来るお店なんですが、やっぱりゆるい形の舞妓さんが上についているノックのボールペンとかよりも、国内でも売れているデザイン性の高い商品がバンバン売れていますよね。
一同:笑
高橋:そんなの当たり前なんですよね。
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