利益基盤を支える保険ビジネスに潜むリスク--医療保険リスク、パンデミック 《ムーディーズの業界分析》


金融機関グループ
AVP−アナリスト 三輪昌彦

 ムーディーズは、国内生命保険会社におけるパンデミック・リスク(それに伴う保有株式における損失リスク) や医療保険リスクの状況に注目している。

昨今では日常生活において、新型インフルエンザに対する注意が呼びかけられる場面もあったが、ムーディーズでは、パンデミック・リスクに関して、3 つのシナリオ(緩やかな死亡率上昇シナリオ、大幅な死亡率上昇シナリオ、極めて大幅な死亡率上昇シナリオ) の下で、格付け先の生保においてどの程度の損失が発生しうるのかを試算している。

現行の格付けにおいては、大幅な死亡率上昇シナリオや極めて大幅な死亡率上昇シナリオが実際に起きる可能性は極めて低い、との前提を置いている。したがって、もしそのような可能性が高まることがあれば、多くの生保の格付けに対して下方圧力がかかることが予想される。また、パンデミックにより、経済活動が停止すれば株式市場が下落することも予想され、同時に2 つのリスクが顕在化するおそれもある。もし大幅な死亡率上昇と株式市場下落が同時に発生するような事態となれば、ほとんどの生保の格付けを引き下げる可能性がある。

このような視点から、生保各社が資本増強、再保険等によるキャット・リスク(大規模災害リスク)管理強化、あるいは株式リスクの削減(パンデミックによる損失と同時に発生しうる株式保有による損失を削減) といったさらなるリスク管理強化に向けて動き出すのかどうか注目したい。

また、医療保険については、昨今販売されている実損てん補型の商品が日本のマーケットに浸透し、販売が拡大した場合、保険会社の負うリスクが増大する可能性もある。そのような状況となった場合、保険料水準や保険期間(保険料率再設定のタイミング) の状況、その他商品設計によるリスク・コントロール、再保険によるリスク・コントロール、資本によるカバーといったさまざまな形でいかにリスクを管理していくのかといった点を注視していく。

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