オバマ大統領の外交政策はリスクの高い賭け--イラクとアフガニスタンの両方で動きが取れなくなる可能性
オバマ大統領は相変わらず高い支持率を維持している。だが外交政策については懸念すべき兆候がみられる。ホワイトハウスは、戦争遂行中のイラクおよびアフガニスタンに関する政策について、複雑な総合的洗い直しを計画実行しようとしている。失敗が許される余地はない。もし米軍が、イラクまたはアフガニスタンで身動きが取れなくなるような事態に陥れば、オバマ大統領は、国内の政治課題に果敢に取り組み、成功を収めるのに必要な政治的体力を失うことになりかねない。
オバマ大統領が直面するこのジレンマを思うと、支持者としては、高人気を博したもう一人の民主党大統領を思い出し、不安になる。リンドン・ジョンソン大統領だ。ジョンソン大統領は、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されたのち、1964年の選挙で大勝し、市民権および医療保険に関する歴史的な法案を推進した。ところが68年になると、米国のベトナムへの軍事介入があまりにも不人気となったために、ジョンソン大統領は再選を目指すことができなくなった。
当時ジョンソン大統領が直面していた問題と比較すれば、今日、オバマ大統領が抱える課題は矮小なものにすぎない。それでも失敗は許されない。ホワイトハウスとしては、イラクについても、アフガニスタンについても、安定を確保するとともに米国の関与を限定的なものとするようなアプローチが必要だ。しかし、肝心な詳細については今後、詰めの作業が必要だ。それは一つには、政府内で、イラクとアフガニスタンに関して相矛盾するアプローチと見解が主張されていて、いまだに議論に決着がついていないからだ。現実の情勢は切迫しており、大統領はもうこれ以上一般論に固執していられなくなるだろう。
戦争の引き継ぎ:オバマ大統領に公正を期して言うならば、オバマ氏はとんでもないめちゃくちゃな状態を引き継いだものだ。2つの戦争によって、米軍の展開は限界に達している。
米国は2001年10月、北大西洋条約機構(NATO)および世界の世論の大半の支持を得て、アフガニスタンに侵攻した。オサマ・ビン・ラディンが指揮するイスラム教過激派、アルカイダが引き起こした9月11日の同時多発テロに対する反撃だった。
アルカイダはこの数年間から、アフガニスタンで自由な活動が可能な状態にあった。アフガニスタンがイスラム教軍事組織、タリバンの過酷な独裁下にあったからだ。皮肉なことに、タリバンが世界の最貧国の一つ、アフガニスタンを支配することができたのは、ソ連による1979年のアフガニスタン侵攻に対抗して戦うイスラム教過激派を援助するために、米国が何十億ドルもの資金を提供してきたからだ。