国会議員の不倫が重要ニュースに昇格した! フジが越えた「ゲスなニュース」の一線
一般の視聴者の中にも、フジテレビの報道に違和感を持った人は多かったのではないか。実際、この報じ方は、従来のテレビや新聞の「報道の常識」から大きく逸脱しているものである。
第一に、国会議員など政治家の不倫スキャンダルそのものを定時ニュースなどでは報じない、という常識からの逸脱。第二に、他社が報じたものをウラ取りせずに報じることはしない、という常識からの逸脱である。
まず第一点からみていこう。
国会議員の不倫はニュースなのか?
政治家の不倫そのものをニュースとして報じないことは、新聞もテレビも、いわゆる大手マスコミと言われる報道機関の記者たちの常識といえる。もちろん過去にはクリントン米大統領(当時)が研修生の女性モニカ・ルインスキーとホワイトハウスで不倫したことが発覚し(1998年)、大きな政治問題になったことはある。また、日本でも1989年、宇野宗祐首相(当時)が元愛人に金銭を支払った愛人契約を結んでいたことを週刊誌(サンデー毎日)に暴露され、その末に選挙で大敗を喫して辞任に追い込まれたことがある。
過去に日本の政治家の“女性スキャンダル”がテレビや新聞のニュースとして大きく報じられたのは、筆者の調べる限り、戦後の日本ではこれくらいしかなく、しかも「首相」という特別な立場だったということは覚えておく必要がある。
政治家の女性スキャンダルは「テレビや新聞のニュースとして伝えるべきなのか」どうか。実は古くから報道関係者の間では議論のあるテーマではある。古い話で恐縮だが、宇野元首相のスキャンダルが出た当時に私は特派員として駐在していたイギリスで反応を取材した。この時、イギリスで名前の知られた新聞やテレビ局の政治記者たちから「政治家の不倫問題は個人的なことに過ぎない。タブロイド紙ならともかく、まともなテレビや新聞は相手にしない下品なニュースだ」と一様に言われたことが強く印象に残っている。
日本ではどうだろう。日本も同様にテレビ局や新聞社の政治部の記者たちは大物政治家たちの愛人関係などをたとえ知っていても知らないふりをしていた。政治家のスキャンダルということでは、「カネに関わること」など公人としての不正が潜んでいる場合にしかニュースにしてこなかった。
筆者の感覚では大手メディアにはプライドがあった。「俺たちは週刊誌のようにゲスじゃない。下半身は書かない」というプライドが受け継がれていたと思う。
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