電通の苦闘--プライド捨て小口営業で地べた這う《広告サバイバル》

電通の苦闘--プライド捨て小口営業で地べた這う《広告サバイバル》

農林水産省が昨年10月に立ち上げた食料自給率向上のキャンペーン「フード・アクション・ニッポン」。5月12日には、推進パートナーの味の素と全国農業協同組合連合会(全農)が、国産農産物の消費拡大策として、大々的なテレビCMと食品スーパーの店頭プロモーションをスタートすると発表した。

「従来の農水省の活動なら、コメの単発PR広告止まり。ここまで広がりのある活動になったのは初めて」と農水省食料自給率向上対策室の牛草哲朗室長は語る。フード・アクションではほかにも、実に1200社強の民間企業が集まり、運動名称のロゴやマークを使用して消費拡大策や啓蒙活動を展開。今年に入っては不況下での雇用の受け皿としての関心も高まり、テレビや新聞、雑誌も続々と農業を特集し始めた。

「最近では、食料自給率向上運動は、農水省の省益拡大を狙った陰謀ではないかという論説が出てきた」。味の素と全農の発表の場に駆けつけた石破茂農水相は、こう言って会場の笑いを誘った。

実は、こうした社会の反響に手応えを感じているのが、ほかならぬ電通だ。電通は、フード・アクションの事務局を農水省から受託。裏方として、民間企業を巻き込んだキャンペーンや情報発信を手掛けている。最近の農業ブームの仕掛け人は電通と言えなくもない。

未曾有の危機に「根本から変えろ!」

電通が得意とするテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大マス広告は、4~5年前から減少を続けている。「ネットなど新しいメディアの登場で、マス広告にとっては大変に厳しい状況を迎えている。今やマス広告というだけでは広告キャンペーンは成立しない」(電通の高嶋達佳社長)。

そこに追い打ちをかけたのが、リーマンショック以後の世界同時不況。前2008年度、電通の業績はスポンサーの大幅な広告費削減を受けて前期比23%減の営業減益に陥り、今09年度はさらに同63%減まで悪化する見込みだ。純益に至っては、08年度は株評価損関連が加わり、実に106年ぶりの創業期以来の赤字転落となった。

ただ、より深刻なのは不況よりも高嶋社長の指摘する構造変化だ。将来景気が盛り返しても、企業はコストの高いテレビCM以外の手法を多用。かつてのように景気回復期にテレビCMに集中的に需要が戻ってくる可能性は低いとみられている。ここに電通の危機の本質がある。


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