電通の苦闘--プライド捨て小口営業で地べた這う《広告サバイバル》
「ついに電通が販促費を取りにいく専門部隊を立ち上げるらしい」--。今年に入り、たびたび流れたうわさ。その正体が、本誌の取材で明らかになった。電通は今夏、巨大な汐留本社ビルの40階フロアをまるまる使用する「プロモーションセンター」を新設する。総勢、約460人。現在の電通のプロモーション事務局(約230人)が母体となり、それとほぼ同数の約230人が販促系子会社の電通テックから異動する。一つの組織として業界最強の販促の企画・実行部隊が姿を見せるのだ。
電通が販促費を本気で取りにいく仕掛けはまだある。07年に電通6割、リクルート4割の出資で設立されたDRUM。電子マネー決済や購買データとの連動、ポイント管理などを統合したICカード販促ソリューションのプラットフォームを提供するIT企業だ。
DRUMは、電通が販促ソリューションをクライアントに提案するときの裏方役。DRUMの遠藤歓代表取締役は「電通は、新しい販促の仕組み提案をきっかけに、コールセンターやプレミアムグッズのプロデュース、さらに販促のキャンペーン用のマス広告やウェブサイトまでを取り扱える可能性がある」と狙いを語る。
すでにDRUMのシステム活用では、コンビニ大手や飲料メーカーなどを相手とした販促案件があり、反応は上々。たとえば、「PASMO」カードを使った東京急行電鉄と自由が丘商店会との実験キャンペーンでは、対象となる自由が丘駅の1日乗降客数(10万人規模)の10%が、駅に置かれたディスプレー付きカードリーダーにタッチし電子クーポンに登録。さらにそのうちの10%が実際に自由が丘商店会で買い物をした。
「こんなに高い来店促進効果があるとは。(『ホットペッパー』など店舗情報誌を展開し、販促に強い)リクルート側も最初のイメージより高いとの反響だった」(遠藤氏)。
放っておけば販促の受注は、印刷物などの価格競争に陥りがち。DRUMなどを活用して、いかに付加価値の高い販促活動を提案できるか。電通の営業マンは、マス一辺倒の発想から転換を求められている。
これまでのやり方を根本的に見直す電通だが、それではメディアの構造変化の震源地であるネットの領域ではどんな戦略を進めているのか。