シャープ買収の神経戦、鴻海か革新機構か カネか経営形態か、再建巡る攻防は大詰め

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2015年末から、シャープ再建に関する報道が飛び交う中、提携候補に挙がっていたのが機構と鴻海である。

機構の出資総額は「3000億円」とされ、シャープから液晶事業を分社したうえで、自らが筆頭株主の液晶大手ジャパンディスプレイと統合させる案を示していた。業界再編の仕掛けともいえる。

一方の鴻海は、シャープ本体への出資を提案。シャープの技術力やブランド力と鴻海の生産能力を合わせ、デバイスから家電まで世界で戦える体制にすることが狙いだ。機構優位とされながら、土壇場で鴻海が形勢逆転に持ちこむことができたのは、経営陣と銀行に向けた、郭董事長流の巧みな交渉術が大きい。

シャープの背後にいる銀行の意向

シャープは鴻海の優先交渉権は認めていない(写真は高橋興三社長)

シャープは2015年12月末で約7000億円の借入金があり、多くがみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の融資だ。

機構はシャープへ出資する代わりに、2行に対し一部債権の放棄を要求。財源が国庫である機構の場合、一企業の借金を肩代わりすれば批判されかねない。「(業界)再編しても(企業)再生はしない」(志賀俊之・機構会長兼CEO)と言い続けてきた。ただ、借金による金利負担が大きく、再出発の足かせとなるため、銀行から譲歩を引き出したい思惑があった。

もっとも2行は2015年6月、債務株式化(DES、デット・エクイティ・スワップ)ですでに2000億円の金融支援に応じており、追加支援には銀行の株主にとって納得のいく説明が必要となる。

銀行と機構が落としどころを見つけられない膠着状態で、鴻海は出資総額を当初提案の5000億円から「7000億円」へと引き上げ、銀行の優先株を買い取る案を提示。それどころか、シャープ買収のための資金を2行含めた国内メガバンクから新規に借り入れる、とした。銀行にとっては債権が保全できるだけでなく、世界的な優良企業への新規融資も獲得できる、またとない提案だ。これで一気に風向きは変わった。

「銀行の“親方”は財務省。所管省庁を敵に回すことはしないが、経済合理性を優先して、(機構を所管する)経済産業省を敵に回すことはありうる」(政府関係者)。

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